研究課題/領域番号 |
26580070
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
金 情浩 東北大学, 文学研究科, 専門研究員 (70513852)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 言語処理 / 手話 / 語順 |
研究実績の概要 |
本研究では、手話言語の統語(語順)処理にかかわる大脳皮質の経時的な変化をfMRI(機能的磁気共鳴画像法)を用いて調べることで、言語(統語)処理の機能局在の解明と手話学習の到達度の変化が脳内処理に与える影響の究明に貢献する。 日本語他動詞文の文理解(処理)時の脳活動を計測した結果、「基本語順文(SOV 語順)」と「かき混ぜ文(OSV 語順)」の文理解時に、左脳の下前頭回(ブローカ野)やウェルニッケ野など主に言語処理に固有に関与する言語中枢領域に賦活が観察され、このことから2つの語順の理解(処理)時に関わる認知処理はかなりの程度共通していることが示唆された。また、「かき混ぜ文」の文理解時に有意に働く賦活領域を特定するために行った「基本語順文」との直接比較では、左脳の下前頭回(BA44/45)に脳活動の上昇が観察された。この結果は、移動操作による統語構造の複雑さと下前頭回を含むブローカ野活動の上昇は、英語やドイツ語などの個別言語特有のものではなく、移動の統語現象を持つ言語において普遍的なものであることを示唆するものである。日本手話の場合も日本語と同様、その語順における自由度はかなり高く、二項動詞の場合、「主語<目的語<動詞(SOV)」の語順(基本語順)だけではなく、「目的語<主語<動詞(OSV)」の語順も「目的語<動詞<主語(OVS)」の語順も許される。 本研究で予想される結果と意義は以下の2点である。(1) 手話母語話者(L1)が移動操作を含む二項動詞文の文理解(処理)時にかかわる言語中枢領域を特定できる。(2)手話母語話者(L1)における統語移動の処理を司る脳部位と手話学習者(L2)における移動を司る脳の部位との対応関係が明らかになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
刺激文作成に必要な基本動詞の数に限りがあり、思った以上に時間がかかってしまったため、当初のスケジュールよりやや遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に作成した刺激文が自然な文になっているかどうかを手話話者に確認してもらい、問題がある刺激文に対しては修正を行う。また、行動実験を実施し誤答率が高い刺激文についても再度調整を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
刺激文の見直しが必要だったため、行動実験の参加者に支払う予定だった謝金分の経費が残る状況に至った。
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次年度使用額の使用計画 |
行動実験とfMRI実験の謝金として使用する。
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