研究実績の概要 |
本年度は、大人に対し、「動き」と「音」の評価に関する調査について予備実験を進め、提示刺激の調整と実験装置の準備も行った。また、コーパスデータよりオノマトペ表現を抜き出し、発話する幼児の月齢とオノマトペ表現の品詞との間の関係を分析した。 並行して乳児の音象徴性理解の萌芽がどのぐらいの月齢にまで遡るのか調べるべく、生後6カ月児を対象に脳波測定研究を実施した。具体的には、音象徴的に適合した新奇語と図形の組み合わせ(例:「きぴ」+尖った図形)を提示した場合と、不適合な組み合わせ(例:「きぴ」+丸みを帯びた図形)を提示した場合の生後6カ月児の反応の違い(すなわち音象徴への感受性)を脳波測定により調べた(11ヶ月児を対象にした調査は既にAsano, Imai, Kita, Kitajo, Okada, & Thierry, 2015などにて報告済みである)。5名(男児2名、女児3名)に対し行った本年度の調査と昨年度に行った事前調査の結果とを合わせ、事象関連電位(ERP)、振幅変化、位相同期の三つの観点から解析を進めている。ERPの結果からは、生後6カ月の時点ですでに音象徴への感受性が存在すること、そしてこの6カ月児の反応には、同様の刺激に対する11カ月児の反応(Asano, et al., 2015)と共通の部分と、異なる部分の両方が含まれている可能性が明らかになった。振幅変化や位相同期解析の結果が揃い次第、総合的に考察し、論文執筆に取りかかる。
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