研究課題/領域番号 |
26580079
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
首藤 佐智子 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (90409574)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 法と言語 / 司法コンテクスト / 語用論 / 法律効果 |
研究実績の概要 |
2014年度は、司法コンテクストを伴う環境における言語使用の現状を分析し、その妥当性を言語学的見地から考察することに焦点をおいて、研究活動を行った。研究代表者と研究協力者の池邉瑞和は、具体的な事例として、自動車運転許否判断の資料として公安委員会に提出される診断書の書式を分析する共同研究を行った。この診断書は、記載された医師の判断が運転の許否に多大な影響を与えるが、診断書書式の言語表現は複雑であり、内容の理解を極めて困難にしていることに着目した。同種の難解さは、法律効果に影響を与える可能性があり、看過されるべきものではない。本研究では、この難解さを言語学的論点から説明し、法律効果に影響を与える可能性をより明確に示すことを目指した。この研究成果は、「文章の難解さが法律効果に与える影響――運転許否に関わる診断書書式の分析」と題した論文として、2015年3月に刊行された『法と言語』第2号に掲載された。本論文の執筆過程は、言語学を専門とする研究代表者と法学を専門とする研究協力者池邉がそれぞれの見地から論点を提供し、その論点に関して他方が知見を提供し、分析を行うという共同作業によって達成された。法と言語という分野における論文執筆のプロセスとして理想的な環境が構築されたが、時間や労力の負担が大きいという問題が明らかになった。 研究代表者は、2014年8月に米国ジョージタウン大学で、司法コンテクストを伴う環境における言語使用に関する調査を行い、他の研究者との意見交換を行った。研究代表者と連携研究者橋内武は、2014年10月早稲田大学で開催された法と言語学会研究例会において、他の研究者と上記論文や他の問題に関して意見交換を行った。同2名は、2014年12月に愛知学院大学で開催された法と言語学会年次大会においても、司法コンテクストにおける言語使用に関して、他の研究者と意見交換を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述の診断書を分析した研究の成果は2万5千語の論文となり、その執筆自体は難航したが、無事本年度中に刊行された。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も司法コンテクストにおける言語使用の実例を分析するという作業を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
法と言語学会の研究会を2回早稲田大学で行ったため、当初予定していた国内出張の旅費が予定額よりも低く抑えられたため、残額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の費用は本年度の国内出張の費用として使用される予定である。
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