研究課題/領域番号 |
26580087
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
寺西 雅之 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (90321497)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 国際情報交換 / イギリス:オランダ:中国 / 文体論 / コミュニケーション / 言語教育 / 文学的テクスト |
研究実績の概要 |
本年度は、Contemporary Stylistics (M. Lambrou, P. Stockwell編著、2007年)、Stylistics(L. Jeffries, D. McIntyre著、2010年)など本研究の基礎となる文体論・コミュニケーション学の重要文献を精読・再読し、当該分野の最新の動向をまとめた。特に、日常言語の文体と芸術性・独創性を分析しているCreativity in Language and Literature: The State of the Art(J. Swann, R. Pope, R. Carder編著、2011)など本研究の目指す文体論とコミュニケーション研究の融合に直結する文献を重点的に検証した。さらに、本研究の仮説の設定や研究手法の確立のために、研究代表者が執筆(共著)した論文The role of stylistics in Japan: A pedagogical perspective. Language and Literature 21 (2)(2012年)など日本における文体論の発展を扱った重要文献も再読・精査した。以上に加えて、翻訳における文体論の重要性および国際理解における文体論の役割等に関しても研究を深めた。 以上のように本年度は研究開始初年度であり、研究活動としては先行研究のまとめが中心であるが、「英語教育とグローカリズム:発信力育成における文学教材の役割」、「グローバル人材の育成を目指して―英語学習成功者のインタビューから学ぶ―」など文学文体論、国際理解、ナラティブ分析等の分野での研究発表も行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、これまで文学テクストを主対象としてきた文体研究を日常言語が対象であるコミュニケーション研究・教育に援用することにより、外国語およびコミュニケーション力の育成に関する教育的示唆を得ることを目的とし、(1)教育的視点、(2)社会的視点、そして(3)国際的視点、の3点から文体論研究のさらなる発展を目指すものである。上記の「研究実績の概要」でも示したとおり、研究初年度において、この目的を達成するために不可欠な先行研究の精査・再読が達成できた点は大きいと考えられる。特に文体論的手法の日常会話分析への援用例や文体論と翻訳・国際理解との関連に関して研究が進んだ点は大きな成果であり、また日本語のインタビューデータが収集できた点は、今後の研究にとっては極めて大きな成果であると考えられる。 その一方で、学校教育以外の指導に用いられる言語データの収集(録音)が達成できなかった点は本研究にとってマイナス点と考えられる。これはその収録を行う予定の試合(ソフトボール)が雨天中止となったことが直接の原因である。また本研究を遂行するにあたり、様々な生活場面において自然な会話・情報伝達をありのままに収録することの難しさが再認識され、この点は今後の課題となっている。さらに、日本語以外の言語データが収集できなかったことも本年度の反省点である。次年度は、言語データの収集を計画通りに行い、さらにその分析も計画に則り実施する。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究を進めていくにあたり、本年度も文体論の専門家である斎藤兆史氏(東京大学大学院教授)、Michael Burke氏(Utrecht大学教授), Dan McIntyre氏(Huddersfield大学教授)、および奥田恭士(兵庫県立大学教授)等と意見交換を行い、本研究に関する示唆を得たいと考えている。 言語データの収集も継続するが、平成27年度は特に海外でのデータ収集を中心に行う。研究を遂行するにあたり、英語を専門とする研究協力者や海外在住の研究協力者の協力を得ながら、これまでの研究ではカバーされていなかった日常の言語(例:学校教育以外の指導現場、非常・災害時の指示など)を収集する。収集されたデータに関しては、意志・情報伝達上の効果と説得力という観点から文体論的分析を行い、言語教育上の示唆を得る。分析より導かれた教育的示唆に関しては、まずはその言語使用者にフィードバックし、教育の改善や非常時の安全性確保などの観点から議論し、提言を行う。さらに本研究による教育的および社会的示唆が、実際にもたらす効果を測定するために、引き続き追跡調査を行う。 平成27年度は、研究成果を発表し、各専門家および社会よりフィードバックを求めていく。具体的には、文体・コミュニケーションおよび言語・外国語教育に関する論考は、国際文体論学会で行う。一方、国際理解に関わる発表は、日本国際教養学会など、国際理解と学際的な研究を専門とする学会において発表を行いたい。また本研究の研究活動と成果に関しては、自身のホームページを開設し、他分野の研究者や広く社会からのフィードバックを得たうえで、本研究活動に反映したいと考えている。さらに本研究の着想から手法、実施、そして成果をまとめる研究書を世界に向けて発信したいと考えているが、平成27年度はその準備も進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由として、勤務校および訪問先のスケジュールに問題が生じ、予定されていた海外および国内での調査ができなかった点がまずあげられる。もうひとつの理由として、ビデオ、ICレコーダーなどの音声データ収集に必要な機器が予想よりも安価であったり、またその購入が別の研究費で賄うことができた点があげられる。さらにこれまでの調査では、研究協力者への人件費・謝金が発生していないという事実も、理由としてあげられる。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は海外も含めて、日常言語データ収集のための調査を行い、その旅費等のために今年度発生した次年度使用額を利用する。英語を専門とする研究協力者や海外在住の研究協力者の協力を得ながら、これまでの研究ではカバーされていなかった日常の言語(例:学校教育以外の指導現場、非常・災害時の指示など)を行う予定であるが、その協力者への人件費・謝礼に対しても科研費を使用する。また上記の調査に必要な機器・消耗品(記録メディア等)にも科研費を使用する予定である。
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