これまで主に心理学の領域で注目されてきたコネクショニズムは言語学に対しても示唆に富んだ研究が多くなされており、第二言語習得研究への応用も大いに期待できる。しかし、概説書で紹介されている実践例は第二言語習得研究への応用を想定していないため、それをそのまま適用することはできない。そこで本研究では、学習の対象となる同一の事象や項目を異なる二言語間で同様に記号変換できる共通の変換フォーマットを提案し、第二言語習得を模擬する学習シミュレーションが可能であることを示した後、複数のシミュレータを用いて、その結果を比較・検証する。このうち新たに海外から購入したシミュレータについては、これまで用いていたシミュレータよりも優れている点(学習アルゴリズムなど)が明らかになったのと同時に、これまで用いていたシミュレータが備えていた幾つかの機能が備わっていないこともわかった。そこで、これまで行ってきたシミュレーションから新たに購入したシミュレータでも実施可能な課題を検討しなおし(「日本語と英語のバイリンガルによる統語の学習」)、足りない機能については表計算ソフトで補いながらシミュレーションを行った。その結果、バイリンガルの学習シミュレーションにおいては、異なる二言語を同時に学ぶことによる干渉効果(顕在化するものと内在化するものとが存在する)など、これまで用いていたシミュレータではわからなかったことが判明した。これらについては、最終年度に当たる本年度8月に全国英語教育学会の大会で発表することができた。また、そこでの発表を踏まえて研究の成果を論文にまとめ、年明けの1月に学会誌(東北英語教育学会研究紀要)へ投稿し、査読を経て掲載論文として採用された。
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