研究課題/領域番号 |
26580118
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
増田 斐那子 早稲田大学, 理工学術院, 助教 (80634542)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 残響 / 雑音 / 日本人英語学習者 / 習熟度 / 外国語学習 / 音声知覚 / 英語子音 |
研究実績の概要 |
本研究課題の最終目標は、雑音や残響を用いた日本人英語学習者用の英語子音訓練教材の開発である。具体的な目的は次の2点である。 ①従来の外国語学習で用いられてきた知覚訓練方法に代わり、より実環境に近い、雑音や残響が背景にある環境の中で外国語音声、特に英語子音の聞き取りが向上する訓練を行う。 ②異なる英語習熟度を持つ日本人英語学習者それぞれに合う適切な教材を開発し、より効率的な学習を目指す。 平成27年度は、(1)雑音・残響環境下における実験実施、(2)習熟度別のデータ解析の2点を集中的に行った。データ解析は、これまで解析方法として使用してきた子音別の正答率および異聴傾向の解析に加え、国際会議に参加した際に海外研究者に指摘を受けて子音のグルーピングを行い、調音方法、有声性などの観点からデータの再解析も行った。平成27年度は、実験、データ解析の結果を査読付き国際会議International Congress on Phonetic SciencesおよびSpeech in Noise Workshopで2件発表(うち1件は査読付き論文あり)し、また国際学術論文集Speech Communication (Elsevier)に学術論文1本として掲載された。現在、平成28年夏に発表予定の査読付き国際会議(International Congress on AcousticsおよびInter-Noise 2016)の論文(採択済)2件を執筆中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成27年度は、次の3つの目的を軸として研究活動を行った: ①雑音・残響環境下の実験データを子音別および学習者の習熟度別に異聴傾向の解析を行った。②実験データをこれまでの解析方法とは異なる手法で再解析を行った(Rを用いたデータ再解析、調音方法・有声性などの観点からの再解析)。③これまでのデータ解析の結果を国際会議および国際学術論文誌で発表した。 ②に関しては、平成28年度夏に開催される国際会議International Congress on AcousticsおよびInter-Noise 2016で再解析を行った結果を発表するため、すでにアブストラクトを投稿し(2件とも採択済)、現在最終原稿を執筆中である。 また、訓練実験をより円滑に行うために複数のトレーニングプログラム作成方法を探索し、比較検討を行った。その結果、TP(Perception Training/Testing)(Rauber, Rato, Kluge & Santos, 2012)というオープンソース言語実験用ソフトウェアを用いて訓練プログラムを開発する段階まで進んだが、平成27年2月から現在にかけ、申請者が所属機関の移動をしたため、実験実施が数か月遅れているが、研究の全体的な進捗に大きな影響はない。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度から28年度にかけては、TPソフトウェアを用いた訓練プログラムの開発を進めている。パイロット実験を夏前に実施し、円滑に訓練実験が進むことを確認してから本実験に進む予定でいる。訓練実験は、申請者がこれまでに行ってきた雑音・残響環境下の実験結果をもとに選定した信号対雑音比および残響時間を使用して行う。習熟度もこれまでの実験およびデータ解析結果をもとに選定した上級・中級習熟度の基準を用いる。収集した訓練実験データは、子音別、調音方法別、習熟度別、言語別(英語・日本語母語話者)などの観点から解析および考察を行う。研究成果は国際会議および国際学術論文集にて国際的に発信する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請者の所属機関移動に伴い、研究活動が若干遅れているため。
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次年度使用額の使用計画 |
国際会議2件(確定)における発表、訓練実験実施のための費用として使用予定。
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