本研究の目的は、アクティブ・ラーニングの視点から英作文教育を見直し、AntConcを使った英作文の自己分析と自己添削法の開発をすることである。英作文教育は、一般的にネイティブ・スピーカーや英語教師によって、教師中心の教育がなされてきた。本開発中の方法は、ネイティブ・スピーカーや英語教師に頼るのではなく、無償で提供されているコンコーダンサー・ソフトウェア―AntConc3.2.1.0 を使って、自分自身で主体的に英作文を改善するやり方である。本研究は、その方法論を確立し、その有用性を実証することである。その方法論を確立するために、英語コーパス言語学の知見と学習者コーパス研究の成果、そして協働学習の理論と技法を援用する。また、その有用性を明らかにするためにネイティブ・スピーカーの添削英文と比較する。 これまで本科研の申請者は、編者の一人として2014年に出版した『英語コーパス活用ガイド』(赤野一郎・堀正広・投野由紀夫編、大修館書店)において、本研究のパイロットスタディ的な論考「AntConc を使った英作文の自己診断と自己添削法」を執筆した。28年度の授業においてもこの方法論を実践し、その後受講者のアンケートを取り、この方法論の有効性と受講者の達成感を調査し、有効性を確認した。今後の問題点として、このような自己添削の方法を日常的に行えるようにすることと、これを英作文だけでなく他の英語の技能、たとえば読解力の向上へもつなげていく方略を工夫する必要がある。 28年度は、JACET(大学英語教育学会)において、シンポジウム「英語教育にコーパスを活かす」において、本科研の成果を発表した。また、他の共編著(豊田昌倫・今林修)と共に『英語のスタイル:教えるための文体論入門』(研究社)を刊行し、本科研の成果として「アカデミック・ライティングと科学論文の英語の文体」を共著で執筆した。
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