2016年度はポルトガル国立歴史外交文書館・スペイン国立政府公文書館において関連資料の調査収集を行った。ポルトガルではマカオおよび東チモール問題を中心とした日葡外交交渉および第二次大戦期の葡萄牙と連合国との交渉関係、大戦終結後の在外公館閉鎖関係の文書を収集、スペインでは在西日本公使館・満洲国公使館の閉鎖関係および在米日本機関閉鎖に関わる米西外交関係文書の調査収集を行った。 2014年度から3年間にわたる研究では、スウェーデン・フィンランド・デンマーク・バチカン・イタリア・スイス・ポルトガル・スペイン各国公文書館および国際赤十字委員会アーカイブズで第二次世界大戦期の日本および満洲国に関連する外交文書の大まかな所蔵状況を確認することができた。なかでもスウェーデン(国立公文書館本館および新館・軍事公文書館)・スイス(国立連邦公文書館)・国際赤十字委員会では中立国・中立機関を介した終戦交渉関係文書の主要な調査を終えることができた。また、戦争勃発後の在外公館閉鎖および捕虜取扱に関する連合国と日本とのやりとりなどこれまであまり知られていない事実が判明し、第二次世界大戦研究における新しい研究領域の可能性が確認できた。さらに、大戦中にマカオ進駐をめぐってポルトガルと、大戦末期のマニラ陥落で起きた民間人殺害をめぐって日本とスイス・スペインとの関係が悪化していたことなど、ほとんど知られていなかった事実が明らかになったことも収穫であった。 この他、当初は想定していなかったが、満洲国に関わる外交文書が多く残されていることは新たな発見であった。これらは、スウェーデンのような中立国以外にもフィンランドなど枢軸国と満洲国との経済貿易関係が中心であるが、満洲国政府の外交文書がほとんど残存していないことから、これらの国々に残されている文書は貴重なものといえる。
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