研究課題
27年度の成果は、以下の3点である。1、中世阿波国撫養地域と1596年地震の関係について検討し、撫養地域は阿波国の特産物を運ぶ機能を持った湊であったが塩を運んでいないので中世撫養地域では塩を生産していなかったと考えられること、淡路から来て塩田開発した者は中世淡路の三原塩田地域の者で慶長10年(1605)に阿波撫養地域で塩業が始まる理由は寛永8年(1631)10月12日竹嶋村庄屋孫兵衛「申上覚」に記されるように撫養地域が文禄5年(1596)の地震によって「動り上」り塩田に適した地域が成立したためであると考えられることを明らかにした。2、従来注目されることのなかった不忍文庫旧蔵『年代記』(国立公文書館所蔵、写本)を見出し書誌学的に検討を行い、この年代記の原本における14世紀後半~16世紀後半の記事は段階的にではあるがほぼ同時代に生きた者により記されたという点で史料として信頼できること、本年代記に従来地震研究では把握されていなかったとみられる4年分6件の「大地震」(貞治2年3月、同年10~11月、応永6年6月12日、応仁2年3月23日、文明8年5月頃、同年12月15日)が記されていること、本年代記に「大地震」のみ記される地震は本年代記の各記主がいずれも居住したと考えられる京都・畿内地域で発生あるいは感じられた地震であったことを明らかにした。3、三重県の津市(安濃津周辺)・徳島県の鳴門市(撫養地区)・静岡県の浜松市(浜松平野)などにおいて考古遺跡および歴史文書と新たに実施した地形・地質調査結果を対比することにより15~17世紀に生じた地震活動に伴う地形変化と土地利用変化の関連性を考察し、それにより安濃津に壊滅的な被害を及ぼした津波が河川遡上型であったこと、撫養地区における入浜塩田の開始が地震性の隆起と関連していること等を明らかにした。
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第四紀研究
巻: 55 ページ: 17-35
災害・復興と資料
巻: 8 ページ: 9-24
巻: 8 ページ: 18-24