中国史上の「巡礼」がいつ頃登場するか。本研究は巡礼史料の集約と考察から、幾つかの成果を出した。 1)「巡礼」は唐代に現れ、9世紀前半に盛り上がった。だがそれは会昌の廃仏で衰退する。ここから廃仏の背後に「巡礼=移動」に対する国家の危機意識を読み解いた。2)敦煌壁画の五台山図は、9世紀前半の五台山巡礼に刺激を受けて描かれた。その原図は長慶4年(824)の唐吐蕃会盟の結果、吐蕃に渡った。3)巡礼は9世紀の後半に再び活発化する。この事実を宋代巡礼の広まりに繋げると、巡礼は唐宋変革に関わる課題となる。4)その他『新編唐代墓誌所在総合目録』『房山石経巡礼題記資料集』『古清涼伝翻訳』などの整理と刊行を行った。
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