研究課題/領域番号 |
26580136
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研究機関 | 愛媛大学 |
研究代表者 |
田崎 博之 愛媛大学, 埋蔵文化財調査室, 教授 (30155064)
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研究分担者 |
宇田津 徹朗 宮崎大学, 農学部, 教授 (00253807)
金原 正明 奈良教育大学, 教育学部, 教授 (10335466)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 考古学 / 農耕空間 / 水田跡・畠跡 / 肉眼による耕土構造解析 / 微細堆積相解析 / 粒度分析 / 微細植物遺存体片分析 / プラント・オパール分析 |
研究実績の概要 |
考古学では、平面的に検出される畦畔や畝・畝間溝といった耕作土上面の形態的特徴を既存の農地と比較することで埋没水田・畠を認識してきた。本研究では、水田跡・畠跡に残された耕土構造の特徴を把握することで、耕土の母材,耕耘形態,耕耘に伴う人間の行動様式,作物、栽培形態から構成される農耕空間の復原を目指した。具体的には肉眼による耕土構造解析を基本として、粒度分析、微細堆積相解析、微細植物遺体片分析、プラント・オパール分析を組み合わせた。耕土層の上下層を含む土壁状試料(幅80~100㎝,高さ20~40㎝,奥行き20㎝前後)を採取することで、水分が一定程度抜けた状態で詳細な観察ができるようになり、発掘調査の現地での観察以上の情報を得ることができた。厚みのある土壁状試料を立体的に観察することで、埋没後に生じた擾乱や変形も排除でき、試料の代表性を確保できた。 奈良県秋津遺跡,大阪府安満遺跡、青森県砂沢遺跡の弥生時代前期の水田跡の肉眼による耕土構造解析の結果、①耕土の下底面には、耕起痕跡と考えられる断面「V」字形や「レ」字形の小さな凹部が発達し、凹部を中心として下層起源の小塊が偏在する。②耕土の基盤が湿地堆積物の場合、上記①の凹部や小塊が心土と考えられる耕土下の土層の下底面でも観察でき、開田や心土の反転の痕跡と推定できる。③耕土は粘土比率が目立って高く、灌漑水の影響と考えられる。④分析を行った弥生前期水田の耕土は、シルト・粘土を主体とする径1~4㎜の円形や楕円形の小塊の集塊で構成され、極細粒砂~シルトの薄層が巻き込まれた状態でみられる場合もあり、耕耘の痕跡と考えられるが、耕土の代掻きが何度も繰り返されていない、などを明らかにできた。なお、肉眼による耕土構造解析の結果を踏まえて行った微細堆積相解析、微細植物遺体片分析、プラント・オパール分析の成果は研究発表の項に記載した各報告を参照されたい。
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