研究課題/領域番号 |
26580140
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
山下 清海 筑波大学, 生命環境系, 教授 (00166662)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 借り傘戦略 / エスニック地理学 / ホスト社会 / 移民 / 適応戦略 / エスニックタウン / 華僑華人 / エスニック集団 |
研究実績の概要 |
マイナーなエスニック集団が,よりメジャーな集団の姿を借用する移民の適応戦略を,本研究では「借り傘戦略」と呼ぶ。本研究では,そのような借り傘戦略に関する理論的枠組みの構築を目指すものである。 平成27年度は3年計画の2年目にあたり,日本国内および海外においてフィールドワークにもとづき資料収集を行うとともに,文献等により世界各地の事例を分析した。海外においては,メキシコおよびベトナムで,また国内では,東京,横浜,埼玉,茨城,大阪などにおいて現地調査を行った。 海外においては,世界的な日本食ブームの中で,非日本人による日本料理店,すし店,すしのテイクアウト専門店などが多くみられる。これらの店舗経営者は,中国大陸・香港・台湾出身の華人のほかに,韓国人,ベトナム・ラオス・カンボジアのインドシナ出身者(その多くは華人)などが多くみられることが判明した。なかには,すしのテイクアウト専門のチェーン店を世界的に展開している韓国人経営の企業もある。非日本人が経営する日本料理店やすし店の店舗名には,日本人からみて,不自然なものが少なくないことなどがわかった。 日本国内においても,中国大陸出身者が「台湾」料理店や「香港」料理店を経営する事例が多くみられること,ネパール人が「インド」料理の看板を掲げてレストランを経営する例も多くみられることなど,新しい発見があった。 日本地理学会の出版助成を受けて平成28年3月に刊行した『世界と日本の移民エスニック集団とホスト社会-日本社会の多文化化に向けたエスニック・コンフリクト研究-』(山下清海編,明石書店)では,本研究の成果である「移民エスニック集団の借り傘戦略」などを執筆した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
外国における非日本人の日本料理店経営に関する事例,資料などの収集は順調に進んでいる。ただし,日本国内における中国大陸出身者の台湾料理店や香港料理店の経営,ネパール人のインド料理経営などについては,今後,さらに聞き取り調査を重ね,多くの事例を収集し,検討する必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は本研究の最終年度にあたる。国内外における移民エスニック集団の借り傘戦略の事例をさらに多く収集する予定である。それらの分析から,移民エスニック集団の借り傘戦略の類型化を行い,それらの要因について考察することが,今後の最も重要な課題となる。
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