本研究は、障害者権利条約で用いられる「合理的配慮」の概念を検討し、平等の意味を法的に再構成する。合理的配慮の不提供は差別行為である。そのため社会的障壁(差別)のある社会は、自由と平等の二者択一を迫られる。本研究は、合理的配慮は「等しさ」の人権論に基づくと解し、集合的・政治的責任として社会的障壁解消の必要性を説明する。 この人権論は、九鬼周造の偶然論や日本の霊長類社会学の相互行為論から着想を得ており、行為者らが同時一緒に同じ行為をすることで等しく価値を享受することができ、そこに相利性、つまり平等があるとする。したがって例えば性暴力の侵害客体は性的自由ではなく、性行為の相利性であると解される。
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