知識国家とは、国民国家の意義と役割を知識の創発と循環に求める新たな国家概念を提唱したものである。本研究では知識国家の萌芽的な存立形態と系譜関係を歴史のなかに探求し再構成することを試みた。そのような関心から特に注目に値するのが、明治前半期の国家構想である。そこでは、近代的な国家の形成が、知識の集積と連携の推進というかたちで進められた。そのことを明確に意識していた人物として、伊藤博文と彼の意を体現するかたちで帝国大学の初代総長として知の制度化を担った渡邉洪基がいる。この両者を主たる対象として、明治期の知識国家の実態を考察した。
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