研究課題/領域番号 |
26590006
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
小畑 郁 名古屋大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 教授 (40194617)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国際連合 / 人権実施手続 / 政府間主義 / 人権の主流化 |
研究実績の概要 |
国連人権理事会諮問委員会に参加の機会を利用し、とりわけ政府代表で構成される人権理事会と個人資格の委員で構成される諮問委員会との緊張関係について、資料を収集し、考察をすすめ、学会報告等の機会に発表につとめた。考察から得られた主な知見は、次の通りである。 第1に、「制度構築文書」によって課せられた諮問委員会の活動に対する制約、とりわけ決議を出すことができず、研究トピックも人権理事会によって選ばれるという制約は相当なものであり、こうした制約が、諮問委員会の活動に対する最も重大な制限となっていることである。 第2に、最近では、政治的に対立を抱えたトピックが審議される場合でも、人権理事会は、諮問委員会の活動に関心をあまり払わなくなっており、他方で、諮問委員会と人権NGOとのリンケージも必ずしも成功していない。 第3に、ごく近年、トピック候補の選定のための議論ができることを利用して、諮問委員会が実質的に「研究の自由」を確保しようとする動きが生まれているが、その帰趨は必ずしも明確ではない。 以上の状況の背景には、人権理事会を舞台にした議論がある意味で活発になされており、通常の加盟国政府にとって、物理的にもイデオロギー的にも一種の加重負担となっている現状がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は、週1日程度勤務する研究員を雇用して、資料整理を中心とした研究の補助を担当させる計画であったが、当初の候補者が別の仕事のため就任できず、また別の候補者もうまくリクルートできなかったため、研究のサポート体制をとることができなかった。 研究代表者のジュネーヴ出張が、それ自体別の仕事である人権理事会諮問委員会の会期中以外には、日程的にとることがむずかしかった。 さらに、当初よりある程度予想されたことであるが、文献の渉猟を本格的に開始すると、このテーマの学術的な議論が世界的に未成熟で、一次資料に直接依拠して議論を組み立てる必要性が明確になった。
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今後の研究の推進方策 |
インタビュー等の実施において、連携研究者との協力を飛躍的に高め、またアルバイトを雇用して資料整理の補助を担当させることにより、研究体制を高度化する。 これまでの既存研究の渉猟・収集のスピードを高める一方で、2次文献の検討よりも、一次資料の分析に着手し、独自の見地の構築につとめる。 人権理事会の会期中に少なくとも1回出張の機会を確保し、実地に見聞する機会をもつ。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の主な支出は、非常勤の研究員の雇用経費と国連の人権関係機関が集中するジュネーヴへの出張旅費であった。 しかし、実際には、見込んでいた候補者が本研究の研究員としては就任できず、その他の適任の候補者も見あたらなかったため、人件費・謝金を使用することができなかった。また、ジュネーヴへの出張も、研究代表者が管理職に就任し、ほとんどまとまった時間をとることができなかったことから、ほとんど実施することができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究員の候補者は引き続き探索しつつ、当面アルバイトを雇用して、研究の整理や文献の渉猟の補助にあてる。連携研究者と密接に連絡をとり、研究代表者および連携研究者のジュネーヴ出張計画を早め早めに立て、積極的に関係者からの聞き取り調査をすすめる。 二次文献・資料の収集も積極的にすすめる。
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