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人権の主流化と政府間主義の台頭という一見矛盾する動向を、構造的に把握するため、本研究では、まず、国連人権理事会の状況について、客観的に把握することにつとめた。 国連人権理事会では、国別の特別手続の利用は減少したが、テーマ別手続は逆にインフレ状態に陥り、現在マンデートの数は41にまで達している。こうしたテーマ別の議論は、会合を年10週間にまで増加させたにもかかわらず、現に議題を圧迫するに至っている。マンデートの受任者は、個人資格の専門家であるため、一方で、専門性の厚い層が形成されてはいるが、政府代表で構成される本会議における具体的成果との結合関係は薄い。とりわけ、こうした動向を背景にして、人権理事会のなかでの改革の動きもあるが、いまだ具体的提案にまでは至っていない。政府間主義の本領が発揮されるべき普遍的定期審査においては、これに投じられる資源や時間と比例した成果はみられていないが、とくに受任者の訪問受入や国連人権条約への参加について、勧告に盛り込まれ、前進が観察できる。 他方で、個人専門家集団が自律的に活動を展開することについては、条約機関を例外として、厳しい監視と警戒の対象となっていることは、諮問委員会に対する対応において明かである。この委員会は、理事会に認められたトピックのみを審議するが、授権されるトピックの数は少なく、情報源もアンケート調査に限定されており、報告に対するリアクションも乏しい。 このように、個人専門家(集団)と政府との間の非生産的な対立はほとんど見られなくなったことは、政府間主義の成果ともいえるが、専門性というリソースの利用ははかばかしくなく、人権の主流化を促進する効果が具体的にみられているとはいえない。しかし、ほとんど評価されていない普遍的定期審査においても、前進がみられており、今後の慎重に観察する必要がある。
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