研究課題/領域番号 |
26590007
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
石塚 伸一 龍谷大学, 法務研究科, 教授 (90201318)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 薬物依存 / ドラッグ・コート / ハーム・リダクション / 日本版ドラッグ・コート / 非犯罪化 / DARC / 刑の一部執行猶予 / 薬物政策 |
研究実績の概要 |
日本の薬物対策は、薬物乱用者にも拘禁刑を科す厳罰主義政策であった。しかし、徐々にではあるが、司法が医療や福祉と連携し、社会内での処遇を重視する方向へとむかっている。これは、米国に おけるドラッグ・コートの展開や国内の自助グループの普及に刺激を受けたダイバージョン政策と位 置づけることができる。わたしたちは、これまで「日本版ドラッグ・コート」構想を提唱してきた。 しかし、この政策には、一回の再使用でプログラムが中断されてしまうという致命的欠陥がある。現在、欧州や米国の一部では、ハーム・リダクション政策が拡がりはじめている。本研究は、日本にもこの政策を導入し、自己使用の非犯罪化・少量所持の非刑罰化と早期介入を実現する可能性があるか、 あるとすれば、どのような条件が必要かを検討することを目標としている。 2年間の研究計画の前半である2014年度は、下記の調査研究を実施した。 (1)全体会議 期首には、具体的な研究計画とスケジュールを確定した。期末には、本年度の調査研究を総括し、次年度の具体的計画を立案したほか、定例研究会を開催した。 (2)調査研究セクターでは、① ハーム・リダクションについての資料収集および文献研究を進めた。②欧州調査(ドイツ、ノルウエー、ポルトガル)を実施し、その成果を、2014年12月の公開研究会で発表した。③ドイツ調査については、龍谷法学にその成果を発表した。 (3)開発普及セクターでは、①パーフォーマンスを活用したエモーショナル・リテラシー教育プランとして、2014 年 3 月「児童劇・カルデモンメのゆかいなどろぼうたち」を上演し、200人以上の観客を集め、「わかりやすく、たのしい」との評価を得た。②DARSと協力して、2014年10月、仙台において薬物依存症回復支援研修会を開催した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究実績の概要】に示したように、当初予定した京急計画については、そのほどんどを実施することができた。 そのほか、①2014年6月、第6回アジア犯罪学会(大阪商業大学)においてセッション「司法福祉が刑事司法を福祉化するのか? それとも、刑事司法が福祉を司法化するのか?~司法福祉の主体は誰か?~」(原文英語)を企画した。②2014年12月、第3回日本更生保護学会大会(龍谷大学)において、セッション「薬物依存とシームレスな支援~刑の一部執行猶予制度導入の意味と影響~」を企画した。その成果は、同学会機関誌に掲載の予定である。 以上のように、研究計画はほぼ予定通り進捗している。ただし、全国のダルクの聴取り調査について、調査計画は立案したもの、パイロット調査の実施までは至っていない。そのために達成度の評価が「おおむね順調」にとどまった。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画の後期に当たる2015年度については、これまでの調査研究の成果を踏まえ、さらに発展を期すとともに、遅れている国内調査を進めることにしたい。 (1)期首および期末に全体会議を開催する。研究会を年4回程度開催する。 (2)調査研究セクターでは、①研究計画を若干修正し、ポルトガルのポルトで開催される欧州犯罪学会に参加して、わたしたちのこれまでの研究の成果を発表するとともに、ポルトガルおよびその他の欧州諸国の薬物政策の実態調査を実施して、ハーム・リダクション政策についてより深く調査する。②全国のダルクの聴取りとアンケート調査を実施する。 (3)開発普及セクターでは、①国内および韓国・ソウルで薬物依存症回復支援研修会を開催する。研修の成果ついての調査を実施する。 (4)総括と展開 ①研究を総括し、成果を発表する。 具体的には、米国ドラック・コート政策と欧州のハーム・リダクション政策とを比較検討し、アジア地域の特異性も踏まえた上で、薬物政策の段階的 発展論(厳罰から治療へ、そして参加へ)を構築する。 ②国内調査の成果を総括して、「日本ダルク・ストーリー(仮)」をまとめ、1980 年代後半におい て、日本社会がどうしてダルクを必要としたのかを明らかにする。③ パーフォーマンスを活用した教育プログラムを実験し、その成果をまとめる。④ 研究成果を国内および国外の学会で報告し、その成果を論文等で活字化する。⑤最終報告会を開催し、研究成果を社会に還元する。その際、Ustream や Facebook などのメディアを活用して内外に情報を発信する。
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