日本の薬物対策は、薬物乱用者に拘禁刑を科す厳罰政策である。しかし、徐々にではあるが、司法が医 療や福祉と連携し、社会内での処遇を重視する方向へとむかっている。これは、米国におけるドラッグ・ コー トの展開や国内の自助グループの普及に影響を受けたダイバージョン政策と位置づけることができる。 わたしたちは、これまで「日本版ドラッグ・コート」構想を提唱してきた。しかし、自己使用や単純所持を処罰する政策は、再使用でプログラムが中断されるという致命的欠陥がある。現在、欧州や米国の一部では、自己使用を非犯罪化し、少量所持を非刑罰化するハーム・リダクション政策がはじまっている。 本研究では、日本にこの政策を導入し、 非犯罪化・非刑罰化を実現した場合の早期介入の可能性を検討した。 【 調査・研究セクター】においては、 (1) 欧州および米国のハーム・リダクションの文献研究および現地調査を実施した。また、 (2) ダルクの訪問調査を実施し、ダルク展開の歴史と70 以上の施設の現状を把握するための予備調査を実施した。 【開発・普及セクター】においては、 (1) パーフォーマンスを活用した回復支援として、演劇や童話を活用したプログラムを開発した。 (2) 薬物依存回復支援(DARS)と協働し、仙台、京都、ソウル(韓国)において、薬物依存回復研修を開催した。 以上の調査研究の成果を踏まえ、覚せい剤を主たる依存物質とする日本の薬物問題の状況に適合する「新たな薬物政策」を構築し、類似した社会的・文化的環境にある東アジア地域において、これたを普及・展開することを次の目標と刷る。ただし、本年度は、科学研究費の助成を受けることができないので、龍谷大学矯正・保護総合センターの研究プロジェクトとして体制を整備し、次年度以降の新たな展開を期することにする。
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