本年度は,外国判決執行判決制度の歴史的観点からの検討及び外国判決変更の訴えを巡る議論の調査のため,日本法,ドイツ法,米国法,EU法を中心に文献調査を行い,適宜研究報告(後記)をし他の研究者より客観的な意見を頂戴しつつ,研究を進めた。本研究の目的であった事情変更を巡る制度の棲み分けの実現については,執行判決に対する請求異議と外国判決変更の訴えについてはその分化は可能でありすべきとの結論に達したものの,外国判決承認執行要件である「公序」との関係は議論が未成熟であることが判明したため,結論は留保しつつ,今後も研究を続けることとした。なお,本研究の展開に示唆的な判断が,ドイツの連邦最高裁で2件(2015年9月23日決定及び2016年2月10日決定)下されたことが今年度判明した。精査は本研究の最終年度後となるが,これらを踏まえつつ,今後も普遍的な枠組みの提示を目指していきたい。 今年度の研究報告としては,渉外判例研究会(2016年5月),北陸国際関係私法研究会(2016年9月),台湾で開催された国際シンポジウム(2016年11月),国際取引法学会(2016年3月),にて研究過程で得た成果につき報告した。なお,研究成果の一部については,年度を超えた,北陸国際関係私法研究会(2017年4月),関西国際私法研究会(2017年4月)においても報告した。 原稿での公表については,前年の国際シンポジウムで報告したもの及び前年度・本年度の上記研究会で報告したものを中心に,論文,研究ノート,判例評釈の形で,後記の通り公表した。なお,2017年5月現在,本研究との関係で脱稿済みの原稿が数本あり,年度を超えた2017年4月以降にこれらについても本研究の成果の一部として公表予定である。
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