研究課題/領域番号 |
26590017
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
村上 勇介 京都大学, 地域研究統合情報センター, 准教授 (70290921)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 社会紛争 / ポスト新自由主義 / 政治過程 / 比較分析 / ペルー |
研究実績の概要 |
本研究の第一段階にあたる本年度は、社会紛争に関するデータベースをほぼ完成させ、数量的な手法を用いて、紛争の発生原因を分析した。ペルーの社会紛争については、天然資源開発に関連した紛争が多く発生しており、それに関する先行研究は、天然資源の開発収益から得られる地方交付金が多い地域ほど、社会紛争が発生する傾向を指摘している。しかし、前年度の報告で指摘したように、天然資源の開発収益による地方交付金は、説明要因として、一定の有効性を持っていることが確認できる一方、紛争が多発する地域と少ない地域といった地域差が考慮されていない限界がある。今年度は、先行研究を踏まえつつ、農業生産活動の重要度(開発による負の影響)、貧困度、過去における天然資源開発の経験の有無、天然資源の開発収益による地方交付金の程度、天然資源開発に反対する左派系政治勢力の存在の有無、5つの要因が社会紛争の発生頻度に与える影響について、社会紛争の発生する頻度の高い地域のあいだでの比較分析を行なった。その結果、基本的な要因として最も重要なのは、過去における天然資源開発の経験の有無であることが判明した。具体的には、1990年代よりも前から天然資源開発の経験を有している地域では、貧困度や天然資源の開発収入による地方交付金の程度、左派系政治勢力の存在といった要因は重要な影響を持たない。唯一重要なのは、農業生産活動の重要度である。つまり、農業生産に負の影響が出ることが懸念される場合に、社会紛争が発生する。これに対し、1990年代以降に天然資源開発が進んだ地域では、貧困度、天然資源の開発収入による地方交付金の程度、左派系政治勢力の存在が社会紛争の要因として重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の基礎となるデータベースの構築は、ほぼ原データの入力が終了し、数量分析を実施することができる状態にあるという意味で、実質的には完成したということができる。これが、進展していると考える第一の理由である。さらに、本年度は、先行研究を踏まえつつ、社会紛争の発生原因について、より詳細な分析を実施することができた。その結果は、先行研究の見解に修正を迫るものであり、社会紛争の原因と発生過程を分析する上で、きわめて重要な手かがりとなるものである。
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今後の研究の推進方策 |
本年度に実施した調査分析結果の検証を行うとともに、異なった条件の下で異なった発生プロセスが観察される背景について、現地調査を実施し、質的な観点から十分に検討を加える。そうすることで、歴史的、構造的な面にくわえ、発生地域の政治的、経済的、社会的、文化的な条件の差異も考慮にいれた分析をおこなう。さらに、そうした調査分析の成果を踏まえ、紛争の終結と予防のあり方、ならびにその実施過程について考察する。そうして得られた知見について、ラテンアメリカの他の国と比較する検証を実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
天候不順による交通機関の麻痺(土砂崩れや洪水などによる陸上交通路の寸断)や、紛争状況の激化による現地治安情勢の悪化により、本年度に実施を計画していたペルーの地方への調査出張がほとんどできなかったことが大きかった。またデータベース構築のための補助員の確保ができなかったこともあった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究目的の遂行のため、次年度は、ペルーの地方での調査研究を十分に実施し、量的な分析を検証し補う質的な分析を実施することを可能とする。また、データベースの完成のために、データ点検や未入力情報の入力のための補助要員を確保する予定である。
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