研究課題/領域番号 |
26590018
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研究機関 | 兵庫県立大学 |
研究代表者 |
井関 崇博 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (50432018)
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研究分担者 |
村田 和代 龍谷大学, その他部局等, 教授 (50340500)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 市民会議 / 人材育成 / 市民参加 / 地方自治 / ボランティア |
研究実績の概要 |
本研究では多くの自治体等が実施してきた「市民会議」に着目し、その人材集積・育成機能を明らかにすることを目的に、その全国的な動向調査と事例調査を実施するものであった。平成27年度は動向調査を継続するとともに、現在進行中の事例を調査する計画であった。 まず、動向調査については、26年度までの類型化作業を踏まえて、継続か終了かを把握した。その結果、多くの事例において終了し、継続予定がないことが明らかになった。その理由として運営の負担が大きいわりに成果が上がらないということが挙げられていた。これは本研究の申請段階では必ずしも明確になっていなかった点である。 次に、進行事例調査では、京都市が実施している市民会議を対象として会議とその運営の観察、参加者アンケート調査を行った。その結果、参加者構成としては現役世代の割合が高いために時間制約付きのボランティアが多いこと、参加者の動機として課題解決志向とともに参加を通した学びや人脈獲得といった自己投資志向が強いこと、育成効果としてつながり形成や市民活動スキルの習得、意欲向上に大きな効果があること、反面、課題解決貢献については満足度が低いこと、その理由としてチーム作りと本業(家庭、仕事)との両立のむずかしさがあること等が明らかになった。また、この会議に対する社会的な期待として長期的な視野にたつ人材育成よりも、直接的・短期的な課題解決志向が非常に強いことが分かった。 以上より、市民会議は時間制約付きのボランティア人材を集積させる機能が高く、その中で市民活動の基本スキルを育成し、次の市民活動へのきっかけを提供する機能を持つ反面、直接的な課題解決機能は必ずしも高いわけではないこと、他方で、社会からはこの課題解決機能への期待が近年、非常に高まってきているがゆえに、市民会議への評価が低下してしまっていることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
市民会議は従来は課題解決機能と人材育成機能の両方が意図されており、本研究は後者に注目したものであった。しかし、近年、地域課題が量的に増加し、質的にも複雑化してきている一方で、その解決を目指す市民活動のレベルも向上してきた。その結果、直接的な課題解決につながりにくい市民会議への評価が下がっているように思われる。他方、地域で求められる人材像も市民会議が育成するようなボランティア人材だけでなく、ソーシャルビジネスを担うような高度な職業的地域人材、自分自身はソーシャルビジネスもボランティアもしないが、そのような営みに関心をもち、時には支援するサポーター人材といったように多様化してきた。以上の複合的な結果として、市民会議の位置づけが不明確になり、それが市民会議の実施件数の減少につながってきているように考えられた。 本研究は地域づくりに資する人材育成のあり方を検討するものであり、市民会議はその一つの手法であった。以上のような状況が明らかになる中で市民会議のみを調査対象とすることは適切でないと考え、上記のうち、幅広いサポーター人材を集積・育成する仕組みと捉えられる地域クラウドファンディングサイトを調査対象に加えることとした。 この地域クラウドファンディングサイトの調査が十分に進められていないことから、進捗状況はやや遅れているとした。
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今後の研究の推進方策 |
今後は市民会議の研究成果を学会で報告することとともに、調査対象に加えることとした地域クラウドファンディングサイトの調査を実施する。クラウドファンディングとはインターネットを介して事業者が目指す事業への寄付や応援、投資を不特定多数の人から調達する方法であり、近年、地域づくりにおいてもクラウドファンディングが取り入れられるようになってきた。 このサイトは第一義的には資金調達の場であるが、同時に課題解決に取り組む事業者とその潜在的サポーターが出会う場であり、サポーターを含む幅広い人々が地域課題を知り、その解決に関心と関わりを持つ方法を知るメディアとして機能している。 そこで本研究では地域クラウドファンディングサイトの全国的な動向を把握した上で事例を絞り、その内容分析と支援者分析を行うことでこの種のサイトの人材集積・育成効果を把握することとする。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究が対象とする市民会議には課題解決機能と人材育成機能の二つがあると考えているが、調査の結果、ボランティア人材の育成機能は大きいが、直接的な課題解決機能は必ずしも大きくないこと、他方で、社会の期待としては課題解決機能の方が強いことが分かった。さらに、地域で求められる人材も多様化しており、高度な職業的地域人材やもっと幅広いサポーター人材の育成が重要になってきている。これらが重なって市民会議の実施件数の全国的な低下の要因となっていることが示唆された。 そこで、本研究では市民会議に加えて、サポーター人材育成の仕組みとして捉えられる地域クラウドファンディングサイトを調査対象に加え、その内容と効果を把握することとした。この作業を行うために研究期間を延長することとし、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
まず、市民会議の研究の成果を学会で報告するための旅費として用いる。 次に、地域クラウドファンディングサイトの実施例の調査を行う。調査ではサイトの記載内容の分析に加えて、運営者や関係者へのヒアリングを実施する。この調査に伴う国内旅費と記録整理のための人件費として用いる。そして、その研究成果の学会報告のための旅費として用いる。
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