本研究は市民会議の人材集積・育成機能を分析し、そのよりよいあり方を提案するものである。このために事例を広く収集し、モデル事例を選定する動向調査と、選定したモデル事例における人材集積・育成機能を明らかにする事例調査を実施した。 平成26年度は動向調査の結果、主に役職者などの代表者で構成される代表者中心型と、関心と参加意欲のある市民で構成される有志市民型の二つの主要なタイプが抽出された。次に、後者のモデル事例といえる京都市未来まちづくり100人委員会を取り上げて事例調査を行った。その結果、市民会議は自己投資志向が強いが、時間制約のある有志人材を集積させる機能があること、参加市民の育成効果の内容は多様であることが分かった。 平成27年度は動向調査をさらに行ったところ、有志市民型の市民会議の多くは終了していることがわかった。その理由は、会議運営の負担が大きいにも関わらず、それが具体的な課題解決につながらないからであることが分かった。これと並行して京都市未来まちづくり100人委員会の調査を行い、市民会議は、人的つながり、活動スキル、意欲向上といった人材育成機能があることが明らかになった。他方で、参加市民間のコンフリクト、当事者性・専門性が低いことから課題解決機能は必ずしも高くないことが分かった。 以上を踏まえ、平成28年度は動向調査をさらに実施して、第三のタイプの市民会議を扱うことにした。すなわち、課題に直面する当事者が集まって、話し合う当事者中心型の会議である。そして、その具体例といえる越中富山幸のこわけプロジェクトと札幌大通まちづくりを対象に事例調査を行った。結果、会議には課題解決に適切な人材が集められていること、また、そのプロセスを通して当事者性、専門性、実績がスパイラルアップしていることが分かった。以上から、当事者中心型の市民会議が今後のモデルになりうることが明らかになった。
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