研究課題/領域番号 |
26590024
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
星野 俊也 大阪大学, 国際公共政策研究科, 教授 (70304045)
|
研究分担者 |
平沢 安政 大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (50243150)
近藤 久美子 大阪大学, 言語文化研究科(研究院), 教授 (90273739)
辻田 俊哉 大阪大学, コミュケーションデザイン・センター, 講師 (90644401)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 未来共生 / 国連平和活動 / 人間の安全保障 |
研究実績の概要 |
歴史的なうねりの中で民族・宗教・宗派をめぐる対立と暴力が後を絶たない中東・湾岸地域において物理的・心理的な「壁(=「共生否定」の象徴的な存在)」を乗り越え、「未来共生秩序(=未来志向の包摂的な共生秩序)」を形成していく“勇気”と“政策”をいかに推し進めていくかを考察する本研究では、国際公共政策、言語文化・人間科学の知見を融合し、学術と政策の両面から現状分析と提言をまとめることを目的とする。その際、マクロの戦略的なレベルとミクロの共生の観点を組み合わせることにより、未来共生秩序に向けた政策要件と教育プログラムの検討をスタートさせた。まずは、中東・湾岸地域の各アイデンティティ・グループ間の相関関係を明らかにし、国際安全保障論及び言語文化研究の観点から物理的・心理的な「壁」がどこにどのように作られているのかを概観した。それとともに、「壁」が作られる源泉として、教育学の観点も盛り込み、各アイデンティティ・グループ間の差異の認識や現状での優劣関係が変更されること(=現状変更)に対する恐怖の存在をあぶり出し、「共生否定」の克服(すなわち、他者への否定的な認識とは別次元の理解と敬意という建設的な認識への転換)に向けた国際協力政策や教育プログラムのあり方を議論する土台を作った。イスラエル及びパレスチナ地域の現地調査も行い、資料収集や現状分析の一助とした。なお、本研究は、「未来共生秩序」形成の一般的な理論と政策を検討することも目的の一つであるため、中東・湾岸地域とは異なる地域(主に東南アジア地域やアフリカ)での動向についても副次的ながら注意を向けて分析した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究者の健康問題があった。まず、研究分担者の一人が年度後半で大幅に体調を崩し、休職に入ったことは本共同研究にとっては大きな痛手であった。同研究者の休職中も担当分野についての助言は得ているが、本人の早期回復を期待したい。また、研究分担者のもう一人も、海外現地調査に出向こうと計画をしているさなかに足を負傷し、年度内の渡航が困難となり、延期をしたことも遅れを誘発することとなった。
|
今後の研究の推進方策 |
第二年度は、「包括的な未来共生秩序」を形成する一つの柱となる外交戦略に焦点を当てて資料の収集や現地調査を実施する。前年度に実施できなかった現地調査も行い、遅れを取り戻す。外交戦略面では、特に紛争管理・紛争解決・紛争転換に向けた普遍的なモデルを構築するため、国連の平和活動に関する一連の研究や実務の知見を収集する。その際、従来の国際安全保障研究や国連研究の枠にとどまらず、言語文化や人間科学の観点からの付加価値を常に意識しながら、既存の研究枠組みにとらわれない学際融合型の視点で外交戦略を検討する。国連本体の活動及び国連における湾岸諸国の活動を分析するため、国連本部(米ニューヨーク)や欧州本部(ジュネーブ)での調査をするとともに、関係の研究機関やNGOなどとの意見交換も行うこととしたい。それらの成果は、共同研究者の間で共有し、研究会合を通じて学際融合的な知見につなげていきたい。
|
次年度使用額が生じた理由 |
研究分担者の一人の病気休職による研究集会の中止や、別の研究分担者の負傷により海外現地調査の延期などが重なったため。
|
次年度使用額の使用計画 |
延期された海外現地調査の実施や、外部専門家の参加を得た研究会合の開催などを通じ、達成度の遅れの回復に努めたい。
|