研究課題/領域番号 |
26590028
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大竹 文雄 大阪大学, 社会経済研究所, 教授 (50176913)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 経済実験 / 再分配 / アンケート調査 |
研究実績の概要 |
偶然手にしたお金については、多くの人は他人に自発的に分配する傾向があることが、独裁者ゲームの実験で知られている。しかし、自ら稼いだお金で、他人に所得を再分配する機会が与えられた場合の行動はまだよく知られていない。所得と再分配行動の関係について、多くの経済実験や実証研究からは様々な関係性を示す結果が得られている。この理由としては、個人の特性が所得と再分配行動双方に影響を与えること、所得が再分配に使われることを予見して所得を得るための行動が変わることが考えられる。 本研究では、実労働によって賃金を稼ぐという設定のもとで、平等選好や能力差が、生産性や再分配の程度にどのような影響を与えるかを明らかにするため実労働経済実験を行った。また、人々の再分配の選好についてWEBアンケート調査を行った。 経済実験では、所得の決まり方と、税という再分配に関する選好との関係について、実労働タスクを用いた実験を行った。実験は、まず、タスク1で、所得税と消費税について税制を選択する。タスク2では所得と消費を決定する。所得額は、実労働タスクに基づくものと、ランダムに決定する2つのパターンを設定する。今回用いる実労働タスクはGill and Prowse(2011, 2012AER)のスライダータスクを用いる。タスク2で得られた所得に応じて、消費額が決められる。タスク3では、報酬を決定する。タスク1で所得税を選択した人は、税引き後の所得額が報酬となり、タスク1で消費税を選択した人は、税引き後の消費額が報酬となる。 WEBアンケート調査は、年代別、地域別に、家庭環境や個人の性格特性、世界観についての設問と、所得の再分配の機会が与えられた場合、どのように行動するかの設問から成り、今後これらの回答を分析することによって、個人の経済行動と再分配選好がどのように形成され相互にどのような影響を及ぼしているかを解明する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大阪大学の学生約120人を対象に経済実験を行い、見かけ上所得税の方が税率が低くなるため、消費税より所得税を選好するというデータを得た。 WEBアンケート調査では、日本全国に居住する20-60代の男女個人を対象に、全国を6ブロックに分け、住民基本台帳に基づくブロックごとの人口構成比に合わせて、調査会社の登録モニターに全国配信し、3369 サンプルを回収した。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年に行った実験の結果を論文にまとめる。今後は所得税、消費税の税率を変えて、消費税の方が税率が低くても、それでも所得税を選ぶかどうかの追加実験を行う。アンケート調査についても分析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
九州大学、岡山大学、家計経済研究所に在籍する連携研究者の旅費を見込んでいたが、2名が海外長期出張となり、スカイプ会議で代替して旅費が不要となったため。
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次年度使用額の使用計画 |
繰り越した金額は、被験者を増やし、実験謝金として使用する
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