自発的再分配行動の特性を把握するために、一般の対象者と看護師の対象者についてウェブ・アンケート調査を行った。具体的には、他人の効用水準が自分の効用関数に直接含まれる「純粋な利他性」、支援行為自体が効用の上昇に繋がる「ウォーム・グロー」と利他性をもたない人を識別できる質問を行った。恵まれない子供に寄付をするか否かという寄付額が、自分の寄付額が直接相手に渡る場合と、その2倍が相手に渡る場合で、寄付額を変更させるか否かで、二つの利他性を識別できる。一般に、看護師は利他的な特性をもっている方が職業的に適していると考えられてきた。一方で、患者の死や症状の悪化に直面する場面において、純粋な利他性をもった看護師は、患者の状況に応じて自らの効用が大きく変動する可能性がある。その場合、大きな精神的疲労をもたらし、心理的バーンアウトをもたらす可能性がある。看護師は、一般の人に比べて純粋な利他性をもつものが多くウォームグローをもつものが少ない。分析の結果、純粋に利他的な看護師とウォーム・グローを持つ看護師は、どちらの利他性も持たない看護師に比べて、バーンアウト指標のうち情緒的消耗感が高いこと、精神安定剤・抗うつ剤や睡眠薬を常用する可能性が高いことが示された。特に、純粋に利他的な看護師かは情緒的消耗感の観点からバーンアウトしやすいという結果は、統計的に安定的に得られた。 また、所得分配の選好や後回し行動などの行動経済学的特性と、長時間労働の関係を消費財メーカーの従業員の労働時間データとアンケート調査によって分析した。その結果、平等を選好する人と後回し行動をとる人は長時間労働をする可能性が高いことを明らかにした。
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