2008年の世界食糧価格危機以降,中西部アフリカ諸国で穀物生産が伸び悩み,輸入が増加している.政府のコメの増産努力にもかかわらず,国内生産は都市部における需要増加に追い付かず,輸入が急増している.本研究は,カメルーンの陸稲を対象に,優良種子生産・流通態勢やポスト・ハーベスト施設の改善がコメの品質改善,需要の増加におよぼす影響を明らかにすることを目的とする.その際,調理方法を考慮に入れた実験オークションの手法を援用し,消費者支払い意志額の推計を行う.
平成29年度は,現地調査の結果のとりまとめと成果報告を行った.現地調査は,京都大学,および,現地の研究機関IRADに所属する共同研究者とともに実施したが,このデータに基づき,計量経済学的な分析を行った.急増する輸入米に対して,国産米の市場競争力を向上するためには,増産政策のみならず,消費者の選好に合ったバリューチェーンの改善が必要である.このような観点から,本研究では,カメルーンの消費者の支払い意思額について実験オークションを用いて計測し,消費者の選好に着目しながら分析を行った.調査結果からは,国産米の認知度は低く,被験者の半数は国産米を知らないことが明らかになった.しかし,実験オークションの結果からは,国産米への支払い意思額は,試食後に増加することがわかった,また,米を調理した際の膨張率増加を好む消費者は,輸入米よりも膨張率の大きい国産米への支払い意思額が高いことが明らかとなるなど,カメルーン国産米が市場競争力を持つ可能性が示唆された.さらに,砕け米の混入率など,米の形状に関する同質性を好む被験者や,味と香りを好む被験者は国産米への支払意思額が低い傾向があるなど,市場競争力を強化するための今後の課題も提示された.本成果の報告に加え,本研究で採用した研究手法に関連し,行動経済学的な手法に関する成果報告も行った.
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