オークションの構造推定分析として、総合評価落札方式(スコアリングオークション)についての識別性の問題について検討を行った。総合評価方式入札では、入札者は価格だけでなくリードタイムや品質など、価格以外の要素も入札し、そうした多次元の入札から最もふさわしい者を落札者とする。本研究では、そうした多次元の入札から入札者の特質(タイプ)を何次元まで識別(特定)することができるのか、またそのための(必要十分)条件は何かについて検討を行った。その結果、入札者の持つ価値関数(入札者が供給者となる調達の入札では、入札者の費用関数)の形状に一定の条件を課すことで、識別が可能となることが明らかになった。 上記の識別性のための必要十分条件を踏まえて、データをもちいた実証分析も行った。その結果、入札方式を変更したり、評価関数(多次元の入札から総合評価点を導出するための評価式)を変更したときの競争性の変化等について定量的な結果を出すことができた。 研究成果としてまとめた``Structural Estimation of Scoring Auctions''は専門雑誌Review of Economic Studiesから再投稿が要請されていることから、この改訂作業を行った。なお、当該雑誌からのリクエストは、当該論文を、研究代表者らが執筆中であるスコアリングオークションに関する理論の論文と合併することとなっており、理論の論文の焦点である均衡分析と併せて、引き続き作業をしているところである。
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