|
本研究は、2006年に日本政府が「平和と繁栄の回廊」創設構想を提唱し、ヨルダン渓谷における農産業団地の設置と物流の促進を推進する中、同回廊地帯において雇用創出の鍵となるオリーブ産業の発展メカニズムをミクロレベルで実態的に解明するものである。具体的には、ヨルダン川西岸（パレスティナ）において、オリーブ農家とオリーブ油精油工場を対象にミクロ経済調査を行い、オリーブ農家と精油工場の生産性・技術効率・技術進歩に関する実証分析・地域比較分析を行うことで、ヨルダン川西岸のオリーブ産業の競争力強化と雇用創出のメカニズムを検証し、平和と繁栄の回廊創設構想の実現に向けた産業育成研究を展開することを目的とする。
2016年度においては、ヨルダン川西岸北部ジェニン県のオリーブ農家において追跡調査を行い、パネルデータを構築した。また、2016年11月に、ジェニン県のオリーブ農家を訪問し、聞き取り調査を行った。また、パレスティナ統計局、パレスティナ水利協会、パレスティナ農業協同組合等を訪問した。同時に、パレスティナ統計局によるミクロ統計（農家家計調査やオリーブ油精油工場調査）を入手した。本調査によるオリーブ農家ミクロデータを用い、確率論的フロンティア生産関数を推計し、技術効率性を評価した。また、同分析によれば、灌漑年数の上昇と集約的栽培が技術効率性を高めることが明らかとなり、同成果を国際ジャーナルに投稿し、掲載された。また、追跡調査によるパネルデータを構築し、DEAによる効率性解析を行った。同分析によれば、技術効率に加え、規模の非効率が全体の効率性を低下させていることが明らかとなり、この成果は2017年5月開催の国際中東経済学会にて報告予定である。
研究期間全体を通じて、ヨルダン川西岸のオリーブ農家の効率性についてベンチマークを作ることができ、非効率性の要因を解明することに一部貢献することができた。
|
