国土交通省の土地保有移動調査を用いて、土地が売買に至るまでの保有期間を調べると、1999年~2014年の間に大きな傾向の変化が無いことを確認した。次に、売買までの保有期間割合を求め、これに適合する分布を求めた。通常このような分布では保有期間が長い部分においては、時間の経過と共に確率が0に近づく分布が使われる。しかし、そのような分布では良い適合度が得られなかった。これは、画地によっては比較的長期間、売買が発生しにくいものがあるためと思われた。そこで、登記発生を指数分布に従う部分と登記行為が行われにくい(モデル上は登記されないと仮定)部分に分けた分布(指数分布に一定の確率を加えた分布)に当てはめたところ、比較的良い適合性が見られた。ちなみに、この比較的長期間売買が発生しにくい画地の割合は約8%であると推定された。このことから、ある程度長い期間、登記情報を集めていけば、市街地全体の画地の9割以上の情報を更新できることが判明した。 ちなみに、このためには、登記において、実測図を地理情報システムに適合したディジタルとして登録されることを前提に、かつ、実測図は十分に精度が高く、一つの画地に関する正確な情報は1回の登記で十分に得られることを前提としている。 売買以外でも、贈与、抵当、分筆、合筆などの事由で登記は発生するために、これらの情報も活用することでより、早く、また広く市街地画地情報を整備できる可能性がある。 登記情報を活用することで、市街地画地情報をかなり整備できる可能性が示されたことで、実際には登記情報のデータ書式の統一化、更新しやすい市街地画地情報の整備方法、効率的な更新方法、推定の結果得られるデータの法律的な位置づけの整理などを進める必要があると思われる。
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