研究実績の概要 |
最終年度は、論文Mifune他(2016)を学術誌PLoS ONE(Journal Citation Reportsの学際的研究分野で63誌中11位、Impact Factor = 3.057)に掲載するとともに、実験参加者175名の実験室実験を実施して分析結果をEconomic Science Association(実験経済学の国際学会)のAsia-Pacific Meetingで報告した。 論文Mifune他(2016)では、心理学者と経済学者が協働し、先制攻撃ゲーム(Simunovic他(2013), "Preemptive Strike: An Experimental Study of Fear-based Aggression," J Exp Soc Psychol 49: 1120-1123)を用いた実験室実験を実施して、互いに攻撃されるか分からない状況に置かれたときの先制攻撃(コストを支払って先に相手を攻撃することにより攻撃されるのを防ぐこと)の頻度を個人と集団(3人による合議)の間で比較した。集団が個人に対峙したときのみ攻撃率が高まることが観察された。 Econ Sci Assocで報告した実験室実験では、投票の実験において投票へ行く費用を金銭で与える場合と機会費用として与える場合を比較し、投票率に対して(被験者内でも選挙ごとに変化する)金銭的費用は負の影響を与えるものの、(被験者内では変化せず被験者間でのみ異なる)機会費用は影響しないことが観察された。 研究期間全体を通じては、従来の実験経済学の方法で得られたデータを経済学以外の分野の観点から解釈したり、従来の実験経済学の方法とは異なるインセンティブの与え方をした実験を実施したりすることによって、他分野の研究者にも受け入れられやすい政治経済学実験を例示することができた。
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