日本のデータを用いて、女性就業率の地域差が経済発展段階にどのように推移したのかについて、明らかにした。女性就業率は1940年から現在にかけての日本の経済発展段階でその地域差が縮小した。1982年から2012年の間のマイクロデータを用い、その時期の女性就業率の地域差の縮小について、以下の4点を明らかにした。第1は、地域差の縮小の多くの部分が、人口学的属性(配偶関係・子どもの有無、以下同様)の構成変化で説明でき、その割合は大卒以外の女性で特に高いことである。具体的には、晩婚化と少子化が、女性就業率の地域差を縮小させた。第2は、人口学的属性の構成変化の影響の大きさが、1990年代までのほうが、それ以降より大きいことである。第3は、人口学的属性を固定したもとでは、就業行動の変化は、大卒女性については2000年代以降に見られるものの、それ以外の女性については限定的であることである。第4は、人口学的属性を固定すれば、就業行動の地域差は縮小していないので、女性の就業行動が地域間でより近いものになったとはいえない、ということである。人口学的属性と就業行動は、多くの国の統計データで収集され利用可能になっている変数であるので、日本のデータを用いた分析の枠組みを、発展途上国を含む他の国のデータに適用することが可能である。それらを通じ、女性の結婚・出産・就業行動の一国内での地域差が経済発展ととともにどのように変化するかの考察が可能になる。
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