本研究課題の最終年度である平成28年度は、交付申請書に基づき、管理会計におけるディスクロージャーと振替価格操作の2つのトピックに関連する経済学モデルを構築した研究を、海外で開催された国際学会および研究会において報告し、さらに国際学術誌へ投稿する活動を行った。第1のトピックとして、企業情報のディスクロージャーの問題に関して、潜在的参入企業が存在する環境下においては、現存する企業にとってどのようなディスクロージャー戦略が望ましいかを明らかにした論文を、European Accounting Association 39th Annual Congressにおいて報告を行った。また、経済学の理論モデルを構築する方法論を基礎として会計の問題を研究する世界の研究者が集う会議である、12th EIASM Workshop on Accounting and Economicsにおいて報告を行った。さらに、オーストリア・グラーツ大学経営大学院のM. Kopel教授とA. Wagenhofer教授より招聘を受け、同大学院で開催された研究会であるDART seminarにおいてこの研究の報告を行った。以上の国際的な活動により、研究代表者の論文へのコメントを中心として、海外研究者との有益な交流が可能となった。この研究論文は国際学術誌に投稿中である。第2のトピックとして、振替価格操作の話題に関して、部門間の振替価格を決定する必要のある事業部制組織を想定し、その組織の上流の製造部門である財の生産が行われ、それが下流の複数の部門で利用される場合に、その振替価格の最適な設定タイミングを求めるモデルを構築し、論文としてまとめ、国際学術誌へ投稿した。
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