研究課題/領域番号 |
26590051
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
小倉 義明 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (70423043)
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研究分担者 |
奥井 亮 京都大学, 経済研究所, 准教授 (20563480)
齊藤 有希子 (梅野有希子) 独立行政法人経済産業研究所, その他部局等, 研究員 (50543815)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 企業間取引 / ネットワーク / 救済融資 / 追い貸し / 中心性 / 影響力指数 |
研究実績の概要 |
本研究では、企業間取引ネットワークにおいて購買者として中核的地位にある企業が、その他の周辺企業と比較して、経営不振時に減免金利による救済融資を得やすいことを示す理論モデルを構築し、実際のデータによりモデルが示す仮説の統計的検証を行った。
1.理論の概要: 中核企業は周辺企業の生産物を多く需要するので、仮に中核企業単体では損失を出していたとしても、これを存続させる方が企業ネットワーク全体の利益が大きい可能性がある。銀行が中核企業を単体で融資審査する場合は、融資は実行されない。しかし、中核企業だけではなく、これを中心とする取引ネットワーク上の企業群に融資を行う銀行は、中核企業の破たんに伴う周辺企業の連鎖破たんを考慮する必要がある。中核企業を支援し続けるコストが、周辺企業の連鎖破たんを避ける利益を下回る限り、銀行は中核企業を支援する誘因を持つ。つまり、企業間取引ネットワークにおいて、ハブにあたる企業は経営不振時に銀行により支援(金利や元本の減免など)を得やすい。いわゆるゾンビー融資と呼ばれる現象の中にはこのような誘因に基づくものがあることが理論モデルより示唆される。
2.実証の概要:企業間取引関係と各企業のメインバンクに関するデータベースを用いて、各企業の影響力指数を推定し、これを用いて「影響力指数の大きい企業は、不振時に減免金利による救済融資を受けやすい」との仮説の検証を行った。地方銀行をメインバンクとする企業群で、上記の仮説を支持する強い結果が得られた。この理由として、地方銀行が県内トップの融資シェアを誇る最有力銀行であり、地域の取引ネットワークを観察しやすい立場にあること、融資先のほとんどが未上場であることから、中核企業を支えるコストを他企業への融資からの利益で穴埋めしやすいことが挙げられる。この結果はメインバンクの固定効果をコントロールした分析でも同様である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の予定通り、分析の精緻化が進捗し、重要な国際学会での研究報告を実施することができた。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの成果の国際的学術誌への公刊を目指す。また、企業間取引ネットワークにおける影響力指数の分散など、ネットワークの形状を示す指標がこれらの企業に融資している銀行の財務安定性に与える影響に関する分析を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
論文原稿の追加改訂が必要であったため、学術誌への投稿を延期した。結果として、投稿料として計上されていた金額が残った。
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次年度使用額の使用計画 |
学術誌への投稿料として支出する。
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