本研究の目的は以下の2点に要約される。第一に,国家形成の基点となる自治都市の行政組織と制度を「公式」領域と捉え,「非公式」領域にある貧困,商関係と信用の特質を掴み,「公式」と「非公式」両領域の相互作用により経済の安定がはかられた構図を明らかにして自治都市特有の経済社会の仕組みを解明すること。第二に,異なる社会的プロフィールを持つ多様な市民の共存を可能にした自治都市特有のメカニズムを解明するために,この「公式」と「非公式」という分析概念を用いることが有効であることを実証し,国家形成期の都市化現象の歴史的意義を明確に提示することである。
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