研究課題/領域番号 |
26590060
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
林 徹 長崎大学, 経済学部, 教授 (20257744)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 起業の十分条件 / 起業の必要条件 / 雌伏の期間 / 潜在的起業者の顕在化 / 起業過程のパターン |
研究実績の概要 |
平成26年度に実施したインターネット調査およびインタビュー調査の結果を分析してまとめた内容の一部について、複数の学会にわけて報告し、また、成果の一部をまとめた論文「起業と強い紐帯」が所属機関の紀要『経営と経済』(長崎大学経済学部創立110周年記念論文集)に掲載された。順に、組織学会研究発表大会、企業家研究フォーラム年次大会、日本経営学会全国大会、である。 第1に、潜在的起業者の重要な精神的な後押しの起源とその時期が明らかとなった。すなわち、影響が大きい順に、配偶者/恋人、友人/知人、職場関係者、であり、また、30歳代、20歳代、40歳代、である。第2に、それによる起業後の経営への影響の内容が明らかとなった。すなわち、顧客重視、長期存続重視、など、長期経営の視点の獲得がそれである。第3に、回答者の年齢(年代)と後押しの時期の関係をみた結果、潜在的起業者が顕在化するまでの典型的なパターンを抽出することができた。すなわち、精神的な後押し(十分条件)、雌伏の期間(ばらつきはあるもののおおよそ5-10年程度)、開業に必要な資金の確保(必要条件)、潜在的起業者の顕在化(具体的な起業の実現、市場参入)である。 第4に、阪神淡路大震災や東北大地震といった大規模な天災、オリンピックなどでの著名なスポーツ選手の活躍、雇用創出の要請、納税、といった要因は、潜在的起業者の顕在化とはほとんど関係がないことが判明した。第5に、精神的な後押しとして、否定的あるいは非協力的なメッセージが潜在的起業者の顕在化に必ずしも直結していないことがわかった。 第6に、インタビュー調査によって、とりわけ上記第5のケース、すなわち配偶者による当初の起業計画への反対、が2件あり、どのような相互作用を経てこれを克服し、起業に至ったかを聴き取ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究成果の発表までは計画通りまたは計画以上であったが、成果の一部をまとめて勤務先の紀要に公表できたことは計画以上の進捗であるから。
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今後の研究の推進方策 |
従来の起業政策と学校教育(指導要領に基づく)において、有効な起業振興に対して不十分な点を明らかにすることができた。今後は、この萌芽的研究を基礎として、あるいは、別途、教育制度面における起業振興策に関する課題と仮説を具体的に抽出して、それを実証するための研究に取り組む必要がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
経費を抑えることができたため。
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次年度使用額の使用計画 |
審査制の学会誌への投稿論文の原稿の推敲、等。
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