研究課題/領域番号 |
26590068
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
藤本 哲史 同志社大学, 総合政策科学研究科, 教授 (50278313)
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研究分担者 |
篠原 さやか 九州女子大学, 共通教育機構, 講師 (90618224)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | インポスター現象 / 女性研究者 / 自然科学系 |
研究実績の概要 |
本研究は、大学や公的研究機関において有期雇用契約により研究に従事する自然科学系女性研究者に着目し、彼女らのキャリア継続と持続的イノベーションの創出を可能にする要因を明らかにする。特に、(1)女性有期雇用研究者のインポスター現象の実態、(2)将来設計に関する不安とインポスター現象の関連性、そして(3)有期雇用研究者に対するキャリア・マネジメントが持つインポスター現象の抑制・緩和効果について、日本とイギリスにおける男女比較調査をもとに明らかにする。本研究の特徴は、わが国ではほとんど研究されていないインポスター現象を女性有期雇用研究者のキャリア形成と関連づけ、どのような心理的制約のもとで女性研究者がキャリアの意思決定を行うかを解明する点にある。
平成28年度は以下の3点を中心に研究を進めた。①2016年1~3月に実施したオンライン調査のデータを用いて統計解析を進めた。特に、前年度までは検証することが出来なかった職場の特性と女性研究者・技術者の自信形成の関係性に焦点をあてて分析を行った。②これまでの分析結果を論文として取り纏め国内外の学会で研究発表を行った。(「女性研究者・技術者の職場風土とインポスター・シンドローム」、経営行動科学学会第19回年次大会、明治大学、2016年11月)。③日本との比較を目的に、セルビア共和国・ベオグラードのふたつの研究機関(国際政治経済研究所および政治学研究所)に在籍する女性研究者(計8名)に対して仕事と私的生活の両立における課題等についてインタビュー調査を実施した(2016年9月)。調査では、対象者の研究歴、自身のキャリア形成上の問題解決方略(解決出来たか、出来なかったか、どのように解決したか)、研究者のキャリア支援のあり方等に関して聞取りを行った。本調査では未婚者と既婚者の両方に、また若手研究者に加えてシニア研究者に対しても聞取りを実施し比較を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成28年度は、新規質問項目を盛り込んだオンライン調査(平成27年度実施分)のデータを解析することにより、女性研究者のインポスター現象に関する理解が深まり、研究を深化することできた。特に、女性研究者と女性技術者の比較を行うことにより、インポスター現象が、職種を越えて理工系女性に共通する問題であることの可能性が発見できた点は今後の研究活動の方向性を探るうえで大きな収穫といえる。また、2016年9月に旧社会主義国におけるインタビュー調査が実現した点も大きい。セルビアで実施した女性研究者に対するインタビューでは、時間的制約が大きいなかでの調査ではあったものの、国際比較の観点から研究課題に対して重要な示唆を得ることが出来た。対象者の範囲を社会科学系の女性研究者に拡大したことにより、これまでの調査結果との比較が可能となり、今後の調査研究の方向性に関して新たな展望を得ることが出来た点は重要である。 ただし、平成28年度は家族に病人が出たため、特に年度後半において研究活動のための時間の確保が困難になり、データの分析および論文の取り纏めが予定よりも遅れることとなった。平成29年度は十分なデータ分析を行い国内学会での研究成果の発表をめざす。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は補足的インタビュー調査を実施する予定である。調査については5月以降に対象者に接触を図り日程調整を進める予定である。これまでの調査に引き続き、若手研究者に加えて中堅クラスの女性研究者にも聞取りを試みる。調査では特にワーク・ライフ・バランスの状況とインポスター現象および自信形成の関連性に焦点をあて、生活上の変化と仕事の調整について丁寧な情報収集を行う予定である。また、笹川平和財団のプロジェクト・コーディネーターであるユー・リリー氏と連携し、インポスター研究の新たな展開方向性についても検討する予定である。さらに、2016年度に実施したオンライン調査のデータを継続的に分析し、分析結果を論文として取り纏め国内学会誌への投稿をめざす。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成28年4月に研究代表者の父が手術を受け、9月には退院したものの平成29年1月に逝去した。そのため、特に年度の後半は研究に集中することが困難となり、秋から冬に予定していた研究活動を中断せざるを得ず、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度のインタビュー調査は補足的な調査に限定して行うことを予定しており、最小限の調査旅費のみ発生するため前年度未使用額で対応する。
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