近年、組織におけるリーダーシップ研究においてフォロワーの存在が重要になってきている。しかしながら、これまでのところ、フォロワーシップに関する学術的な研究は皆無に等しい。そこで本研究では、これまで明確に定義されることのなかったフォロワーシップ概念を確立し、フォロワーシップの機能やタイプなどについて探求することを目的とした。様々な文献をレビューした結果、フォロワーおよびフォロワーシップに関する一定の定義が得られた。すなわちフォロワーは「上司やリーダーによって役割形成され、その示す方向性や枠組を前提として組織に貢献しようとする成員」と定義づけられた。また同様にフォロワーシップには「組織成員がフォロワーであることを自ら選択しているという自覚のもとで、組織のエージェントである上司やリーダーの意を体し、指示命令に効果的に従い、時には上司やリーダーが前提とする枠組を超えた行動によって組織に貢献しようとするプロセス」という定義が与えられることになった。そこで、それらの定義に基づいて、実証研究を実施した。まず、フォロワーシップ行動を特定化するために、部下を有する200名の管理者に対してWEB調査を実施し、60のフォロワーシップ行動を抽出した。そしてそれらをもとに、上司を有する労働者1000名を対象に、新たなWEB調査を実施した。因子分析を施した結果、フォロワーシップ行動特性は三つのタイプに分類されることが明らかになった。それらは、受動的忠実性、能動的忠実性、プロアクティブ性と命名された。次に、これらの特性と労働成果および心理的安寧との関係を探ったところ、受動的忠実性は両方に対して負の影響を有し、プロアクティブ性は両方に対して正の影響を有することがわかった。さらに、能動的忠実性は労働成果に対しては正の影響力を有する一方で、心理的安寧に対しては負の影響力を有することが明らかになった。
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