繊維産業や工芸の分野を中心に、新たなマーケティング活動の態様やその担い手に関する調査を行い、日本中小企業学会九州部会や日本流通学会関西・中部部会シンポジウムでの報告を行った。現状認識のみならず、歴史的・理論的研究との関連について議論できた。
当年度の研究により、まず、いわゆる成熟産業への就業や事業化が、幅広い領域で進んでいることを確認することができた。海外で行った展示会などでのフィールドワークによって、日本中小繊維企業が、巧みな国際マーケティングを展開していることが明らかとなった。自主企画・開発型だけでなく、共同企画・開発型の事業についても成功を収めている事例を発見できたことは、中小企業の国際マーケティングの可能性を展望する上で、特に重要な発見である。次に、これまで得られた発見事実と理論的な研究との関連を検討することができた。戦略論、制度論、ネットワーク論の研究成果を吟味し、学会報告などでは、中小繊維企業による資源の選択・活用のあり方を類型化する視点として価値創造志向とコスト削減志向とに区分し、それぞれの制度・ネットワークの違いについて明らかにした。
以上のように、当年度には、当初想定していた問題の実証的・理論的解明に向け、着実な成果をあげることができた。しかし、学会等での議論を通じて、本研究には理論的な検討課題が多く残されていることも判明した。当年度の到達点と残された課題を踏まえ、平成27年度以降は、分析枠組みの開発に一層力を入れたい。
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