研究課題/領域番号 |
26590075
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研究機関 | 成蹊大学 |
研究代表者 |
井上 淳子 成蹊大学, 経済学部, 准教授 (40386537)
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研究分担者 |
有賀 敦紀 立正大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (20609565)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | gaze-cueing / パレイドリア |
研究実績の概要 |
gaze-cueingの効果について顔の線画を用いた実験(コンピュータベース)を行った結果、cueとなる画像を117ms提示した場合には、cueとターゲットが一致する条件においてその方向の同定時間が有意に早くなることがわかった。一方、提示時間が700msになるとその効果は見られなかった。このgaze-cueingの効果と被験者の一般的信頼性得点の相関係数を算出したところ、提示時間が117msの条件で弱い正の相関(r = .27),700msの条件で正の相関が認められた(r = .48)。つまり、線画であっても視線的手がかりがターゲットを同定する反応時間を早めるか否かは、当事者が他者を信頼する傾向にあるかどうかに左右されることがわかった。 上記に加えて、購買状況を背景とした場合のgaze-cueing効果について明らかにするための実験を行った。その結果、gaze-cueingの効果は購買場面では消失することがわかった。これは被験者が刺激の多い購買意思決定の局面では視線認知を抑制している可能性があることを示唆している。 最後に、人の顔に見える対象としてのパレイドリア(顔様刺激)が顔刺激と同様の効果をもたらすかどうかを検証する実験を行った。パレイドリアを妨害刺激として用いた結果、顔刺激条件ならびに統制条件に比べて有意に課題遂行時間にマイナスの影響を及ぼすことがわかった。この結果はパレイドリアが被験者の注意を捕捉したことを裏付けている。 以上の実験より、gaze-cueingは一定の条件下で確実に効果を持つことが明らかになるとともに、パレイドリアも効果発生の時間的ラグがあるものの顔刺激同様の効果を有することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コンピュータベースの実験室実験はおおむね完了しているが、当初設定した仮説とは結果が異なる部分もあり、大規模なフィールド実験の実施に影響が出ている。夏に人が多く集まる場所にて、フィールド実験を行う予定だが、大きなコストを要するため、慎重に実験計画を作成している段階である。
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今後の研究の推進方策 |
大規模なフィールド実験を実施する前に、これまでに実施した各実験間で整合のとれていない部分を解消したい。そのためにいくつかの追試を実施する予定である。また、コストのかかるフィールド実験を前に、実験刺激の作成ならびに、手順の確認を慎重に行い、失敗のない実験を行いたい。フィールド実験では関係者の協力も必要であるため、現在その準備と手配を進めている。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年度に実施したフィールド実験において課題が多く見つかったため、2回目のフィールド実験の実施を延期し、その間に実験室実験を複数行った。実験室実験にはコンピュータを用いて実験素材を研究者自身で作成して賄ったり、便宜サンプルとしての学生を実験参加者としたため、デザイン料や謝金を使用しなかったことが残金の生じた理由である。
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次年度使用額の使用計画 |
先述の通り、延期しているフィールド実験の実施費用として用いる予定である。屋外、屋内に設置可能なgaze-cueing実験素材をデザイン会社に依頼して作成するための費用、ならびに実験協力者への謝金として用いる。また実験が完了後には論文を執筆する予定であり、その校閲の費用としても充当したいと考えている。
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