研究課題
本研究は会計基準の国際的な収斂が進んでいる状況下で、比較研究や会計類型化等の従来の国際会計研究が有効性を失っているとの認識のもと、国際会計研究における新しい分析枠組み・分析方法を開発することを目的としている。平成27年度には、従来の研究の到達点と課題の整理を洗い出し、当該課題を克服する新しい分析枠組みと分析方法の開発を行った。①先行研究の成果の棚卸及び問題点の整理:IFRSの導入効果に関する実証分析の結果は、IFRSの導入が一定程度の正の影響をもたらす一方で当該影響の正負の方向や程度が国・地域ごとに異なっており、会計インフラストラクチャ、とくにエンフォースメントの程度に左右されることを示唆している。また、分析上の問題点として、多くの実証分析において時間効果と導入効果との区別が必ずしも明確でないが、国際比較研究の新たな潮流として、IFRS導入の時期、方法、採用する基準の国・地域ごとの違いを制度的文脈の違いによって説明する研究があるので、その検討を行った。他方、定性的研究に関しては近年、特に国際会計基準設定主体を中心とした歴史的研究に多くの成果がみられるが、それらは従来型の歴史的説明や制度的説明に終始したものであった。②新しい方法論の提案:会計基準と会計インフラストラクチャの双方が規定し合い変化するという分析枠組みを新制度派経済学に基づいて共進化関係として理論的に同定することにある程度成功した。定量的研究において、国際会計基準の導入効果を明らかにするためには、DID分析が有効であるが、DID分析によっても会計インフラストラクチャがもたらす因果メカニズムを明らかにすることは困難であるため、事例研究の一種である過程追跡アプローチを検討した。実証研究と事例研究を相互補完的に統合することによって、会計インフラストラクチャの連続と断絶の共存という世界の会計の現状を総合的に把握することが可能となる。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 1件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 2件、 招待講演 5件)
青山アカウンティング・レビュー
巻: 第5巻 ページ: 72-79
商学論究(関西学院大学商学研究会)
巻: 第63巻第3号 ページ: 111-131
Korean Accounting Review
巻: Vol.40 ,No.2 ページ: 299-335