研究課題/領域番号 |
26590080
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
山本 達司 大阪大学, 経済学研究科(研究院), 教授 (80191419)
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研究分担者 |
田口 聡志 同志社大学, 商学部, 教授 (70338234)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 財務会計 / 会計不正 / 利益調整 / 新規株式公開 / 行動経済学 / 経済実験 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、会計不正を根絶する会計制度の設計について、その有用な方法を理論と実験を通して、会計規制設定機関に提言することである。 本研究プロジェクトでは、まず最初に、企業の新規株式公開前の利益調整行動に着目し、創業者・主幹事証券会社・投資家をプレイヤーとする理論モデルを設計し、新規公開価格が企業のファンダメンタル・バリューに比べてオーバー・プライシングされているという仮説を設定した。そして、その仮説を検証するため、同志社大学において学部学生を被験者とした複数回の実験室実験を行った。その結果、仮説を支持する結果が得られている。研究成果は、行動経済学会第9回大会(招待講演、2015年11月28日-29日、近畿大学)、The 6th International Conference of The Japanese Accounting Review(2015年12月9日、神戸大学)、Tokyo Accounting Workshop(招待講演、2016年3月11日、東京大学)等で発表している。 本プロジェクトでは、さらに新しい研究をすでに計画している。その根本にあるリサーチ・クエスチョンは、「人間はなぜ嘘をつくのか」という問題である。この問題について、経済学的アプローチと心理学的アプローチの両方から検討を進めている。これについても、理論モデルを設計し、それに基づいて仮説設定を行い、学部学生を被験者とした実験室実験を行う予定である。この問題を解明することによって、「経営者はなぜ粉飾決算を行うのか。経営者の粉飾決算の動機を考慮に入れた上で、粉飾決算を防止するための有効な会計規制は何なのか。」という問題の検討を進めることにしたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究分担者である田口が、昨年、本研究プロジェクトの成果である著書『実験制度会計論―未来の会計をデザインする―』(中央経済社)を公刊し、それにより第58回日経・経済図書文化賞(2015年11月3日発表)を受賞した。これは本研究プロジェクトの最大の功績である。 それに加えて本研究プロジェクトでは、新たな論文を行動経済学会第9回大会(招待講演)、Tokyo Accounting Workshop(招待講演)で発表するとともに、The 6th International Conference of The Japanese Accounting Review(国際学会)で発表している。そして、これらの学会で得られたコメントに基づいて論文をリバイスし、the 2016 AAA (American Accounting Association) Annual meetingに現在投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究計画は次の通りである。 ・本研究プロジェクトにおいてこれまでに行った実験を精緻化し、分析に有用なデータの収集に努める。 ・既に完成しているワーキング・ペーパーを海外の学術雑誌に投稿する。 ・「企業はなぜ粉飾決算をするのか」という問題を解明するために、新たに心理学ベースの理論と実験を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究発表のための出張旅費が、研究会不開催のため執行できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
研究成果発表のための出張旅費として、有効に利用する。
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