グローバル化に対抗する社会運動や市民社会組織は、新自由主義的秩序に代わる「もう一つの世界」を追及しているが、それはどのようなものなのか、実現可能なものなのか。本研究の主な目的は、このような問いを探求することである。平成29年度は、研究成果を広く発信するための国際学会での発表や国際共同研究に重点を置いて活動を行った。また、このテーマの更なる探求のために、メキシコの社会運動・市民社会組織のデータ収集と分析を海外の研究者や大学院生とともに実施した。具体的な実績概要は以下の通りである。
1)4月29日から5月1日にペルーのリマで開催されたLatin American Studies Associationの年次大会にて、国際共同研究チームの研究成果の報告を行った。ラテンアメリカ政治の最新の傾向を、イベントデータ分析を通じて比較研究するパネルを組織し、ブラジル、アルゼンチン、チリ、アメリカ合衆国の研究者たちと研究成果について活発な議論を行う機会をもった。また、東京大学の大学院生も積極的に成果を発表し、将来の研究者を養成する機能も果たした。 2)アジア経済研究所と共同でメキシコの社会運動や市民社会の研究活動を実施した。データの収集作業を補助する担当者を雇用し、主としてメキシコの新聞記事を用いたデータ収集を進めた。 3)11月にメキシコのエル・コレヒオ・デ・メヒコ大学院大学にて国際共同研究を実施した。メキシコの研究者や学生と共同研究チームを組織し、アジア経済研究所の研究チームとも協力してデータ収集作業を進めた。 4)上記2と3の作業で収集したデータを分析し、その結果を論文にまとめた。タイトルは「メキシコの市民社会の変遷:民衆抗議行動の歴史空間的解析を通じて」であるが、刊行は平成30年度になる見込みである。
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