研究実績の概要 |
本研究では以下の研究ステップを経て,学校を核とした地域社会機能の変化を明らかにした。 1)文献調査と現地調査により,明治初期の学制施行以後,村落学校,尋常小学校を起源とする和歌山県内で設置履歴のある学校,廃校の沿革史と社会背景,災害履歴などの一覧整理した。この結果,データベース化した学校情報は和歌山県及び和歌山県と県境で接する奈良県,三重県の一部を含め2300校となった。これは、現役校から,統廃合の歴史を遡り幾つかのルーツ校へと至ったその変遷の過程に登場した学校数である。またこれらの学校及び学校跡は現地調査を実施し,その場所を特定した。 2)得られたデータを元に作成したマップレイヤーをGoogleMapに公開し,閲覧者から寄せられた情報を活用して情報の高精度化をはかった。 3)学校変遷史と地域の歴史的事実を体系的に整理,年表化したデータベースを構築し,地域と学校施設が持つ絶対価値と相対価値を抽出し,学校変遷と地域社会変化との関連性を明らかにした。学校変遷の歴史は地域社会の財政,プライド,近隣との争いなど時代毎の地域の姿と関係性が深いことがわかった。 4)成果は地域新聞やインターネットを通じて研究発表をした。取り上げられた媒体は50件を超えた。またデータベースをわかりやすく再編集した学校変遷史を一般書『熊野の廃校』(湯崎真梨子,中島敦司,南方新社)として出版。和歌山県南部の熊野エリアの廃校について,学校を核とした明治~現在に至る地域社会の変遷史をまとめたものである。これは地域社会機能変化の視点から廃校利活用施策の応用に貢献できるものとなり各方面から評価をいただいた。
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