研究実績の概要 |
2年目に当たる今年度は、研究組織全体としては、7月に横浜、3月に広島で研究会を開催し、代表者(長坂)と分担者(小ケ谷)の研究の進展状況を互いに報告した。これまでの男性性研究についての知見をまとめ、再生産労働に従事する男性の男性性の変容と家族関係の変化という本研究の調査課題を、既存の男性性研究および移住研究に位置づけるともに、イタリアでの合同調査の実施計画、調査対象、調査項目について討論を重ねた。それぞれの研究内容としては、長坂は、以前実施したイタリア在住のフィリピン系住民に関する調査の資料の再分析と男性性関係の文献のまとめを中心に行った。前者については、11月にデンバーでおこなわれたアメリカ人類学会においてその成果の一部を発表した。後者については、フィリピン系男性を対象とした移住と男性性に関する文献研究の知見を整理し、来年度のイタリア調査の視点を先行研究の中に位置づける作業をすすめた。小ケ谷は主として文献調査および3年目の海外調査のための準備作業を実施した。文献調査としては、「移動とジェンダー」分野の中でも男性性に着目した最近の研究を俯瞰し、特に本研究が着目する再生産労働の「女性化」された側面について、男性労働者が実践する新たな「男性性」と再生産労働の結び付けや、労働現場でのジェンダー関係のマスキュリンな視点からの再解釈、といったジェンダー規範との交渉についての先行研究(たとえばShinozaki,Kyoko,2015, Migrant Citizenship from Below:Family,Domestic Work, and Social Activism in Irregular Migration, Palgrave)から多くの示唆を受けた。
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