リーマンショック後にブラジルに帰還した日本就労経験者の雇用状況と生活状況について、ヒアリング調査を中心に進めた。帰還移民者自身への聞き取りとともに、帰還移民者を雇用する現地企業へのヒアリングから、日本就労の経験の内容が厳しく吟味されており、評価されるような職種に就いていた者とそうでない者とで大きなチャンスの差が存在していることが明らかになった。 一般には、年齢が若い方が戻った場合も有利であると考えられがちであるが、このような考え方自体が日本的なものであり、ブラジルでは年齢よりも何ができるのかが厳密に評価されることで、年齢ファクターがあまり効いていなく、むしろ経験値を一定程度持つことが要求されることで年齢ファクターは若年層ほど不利になっている結果として出てきた。 また、日本が長期にわたって経済低迷している間に、ブラジル経済が上昇することにより、①ブラジルでの賃金水準一般が上昇したこと、②ブラジルで生活するのに必要な資金も上昇したことにより、景気低迷の日本で働き続けることが獲得できる賃金の上でも、そして帰国のために用意しなくてはならないお金を貯める上でもネガティブに働いていることが判明した。この点で、ブラジル人労働者の近年の大量帰国が日本の側だけの要因で起きたのではなく、それ以上にブラジル側の状況が大きく変わることによって発生していたことを明らかにした。
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