本研究は、オーストラリアのアジア系専門職移民のホスト社会への文化・社会参加に関し、特にアジア系移民作家による小説・自叙伝など表現を通じた文化・社会活動に関する分析枠組みを精緻化することを目的としている。今年度は、分析に必要な資料・情報を得るために、文献調査および現地調査を前年度に引き続き実施した。 文献調査については、オーストラリアの文学賞および文学イベントに関する情報、アジア系移民作家の作品に対する書評、英語教育とアジア系移民作家の作品に関する政府資料、アジア系移民作家の文化・社会活動の情報について、インターネットによる検索、収集を行った。現地調査は、2015年5月にシドニー(7日間)、8月にメルボルン(12日間)、11月にメルボルン(6日間)を訪問した。5月のシドニーではSydney Writers’ Festivalに参加し、アジア系移民作家およびオーストラリアの文学と社会との関わりに関する情報を得た。8月のメルボルンではMelbourne Writers Festivalに参加し情報を入手すると同時に、文化・教育関連機関でのインタビューを実施した。11月のメルボルンでは、Asian Australian Studies Research Networkによる研究大会に参加した。このネットワークはアジア系オーストラリア人研究者が中心となって運営されているものである。今年のテーマは"Mobilities"で、文学作品の内容紹介や研究発表も多く、研究者との交流も含め本研究にとって非常に有意義な現地滞在となった。また、この3回の滞在中、州立図書館、大学図書館でさらに必要となる資料を収集した。資料・情報収集はほぼ計画通り終了し、前年度および今年度収集した資料・情報に関し、整理・分析を進めた。
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