本研究は、ドイツにおける求職者基礎保障(SGBII)の実施主体の選択肢としての認可自治体モデルに着目し、長期失業者の社会生活・職業生活への統合というSGBIIの政策分野がローカルなレベルでどのように担われているかを明らかにすることを目的とした。SGBIIの実施主体の大多数は自治体と労働エージェンシー(AA)の協同機関(gE)であるが、108を上限とする自治体にはこの政策分野を単独で担うことが認められている。本研究はこの認可自治体モデルに着目し調査を行ってきた。 他方、近年では若年失業者に焦点化した若者就労機関(JBA)の設立が進められてきており、ここでは青少年扶助法(SGBVIII、自治体が実施)とSGBII(認可自治体又はgEが実施)および雇用促進法(SGBIII、連邦機関であるAAが実施)という三つの行政資源の連携関係構築が推進されている。この三者に加え、さらには学校教育の責任主体である州をも含む連携が、各地において多様な形態で進められてきている。 2016年度にはこのJBAの各地における展開を射程に入れて現地調査を実施した。具体的には、認可自治体モデルとしてオッフェンバッハ郡、gEにおける若者就労のための連携事例としてフランクフルト市、デュッセルドルフ市においてインタビューを実施した。 これらの現地調査の限りでの印象ではあるが、SGBIIの認可自治体モデルにおいては、そもそもSGBIIとVIIIの実施主体が自治体内に置かれ、学校当局(州)との連携もスムーズに構築されている傾向が見て取れた。その一方で、gEモデルにおいても、連邦・州・自治体という異なる政府レベル間の連携が着実に進行中ではあるが、こうした連携がともすれば「混合行政」に陥る懸念があり、かつてARGE(gEの前身)が違憲判決を受けたことの繰り返しにならないように手探りしている状況も垣間見られた。
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