本研究では、更生保護施設という本来保健・医療サービスの機能を持たない入所型の施設における、薬物依存という精神障害のある刑事施設出所者に対する、地域生活への移行支援のあり方について検討することを目的とするものである。 1年目は、薬物依存のある刑事施設出所者に対する支援について、国内外の文献レビューを行い、その内容を踏まえて、「第四次薬物乱用防止五か年戦略」(平成25年8月薬物乱用対策推進会議決定)をはじめとする国の取り組みの具体的内容について考察した。そして、2013(平成25)年度に指定された薬物処遇重点実施更生保護施設の中から、指定以前から薬物依存のある利用者を対象としたプログラムを提供してきた施設を選定して、利用者に対する個別インタビューとフォーカスグループインタビューと施設職員に対する個別インタビューを実施した。 2年目は、初年度に選定した施設において、過去のプログラム実施における記録等のデータ収集を行うと共に、プログラム開始以降の職員の意識の変化についての聞き取り調査を行った。 最終年度においては、ベルギー、ドイツ、オランダにおける薬物依存ある人の再犯(再使用)防止を目的とする地域プログラムについての現地訪問調査を実施し、国内の薬物規制関連法制度や薬物依存の治療・支援体制の現状における導入の可能性について検討した。さらに、全国25箇所の薬物処遇重点実施更生保護施設の職員を対象としたワークショップを開催して、更生保護施設における薬物依存のある刑事施設出所者に対する支援のあり方についての基礎的情報提供を行うと共に、グループセッションにおいて現任職員が直面している困難の共有を図ると共に、今後の課題の抽出を含めて支援のあり方について検討した。
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