困窮者支援活動において,その日常的なサポートの記録を電子化し,データベースで管理するシステム構築が求められている。われわれは,2010~13年に内閣府「パーソナル・サポート・サービス事業」として行われた「福岡絆プロジェクト」において,そのシステム構築に携わった。その際,困窮者への日常的なサポート内容を10種類程度に分類し,それぞれの支援内容を分類ごとに文章で入力されている実態を知った。 しかし,支援の現場では,一度のサポート対応で支援される内容は多岐にわたるのが実際である。そうであるならば,支援内容を細かく分類して文章を入力するシステムより,入力された支援内容の文章をもとに,システムが自動で分類するしくみを構築することで,支援員の記録入力負担を軽減できるだろうと考えた。この負担が減れば,支援員は本来の支援業務により注力できるようになるだろう。 このしくみを実現するため,各分類ごとのサポート内容を記録した実際の文書集合を「教師」として,それぞれの支援分類に特徴的な文章を「学習」するシステムを構築した。主に用いた手法は「トピックモデルによる潜在意味解析」である。 構築したシステムを使って,与えられた文書がどの支援分類に分類されるかについて,プログラム(機械)と人間のどちらがより正しく分類できるかを比較する実験を行った。また,逆に,人間が特定の支援分類を前提に作成した文章をどの程度正しく機械が分類できるかの実験も行った。これらの実験データからは,比較的高い正解率を与える支援分類と,あまりうまく分類できない支援分類とがあることが分かった。今後は,これらの成果を論文等にまとめるとともに,分類がうまくできない原因の探求など,システムの改良に取り組みたいと考えている。
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