米国のMilitary Social Workの概要・実践状況及び専門職(Military Social Worker)養成課程の状況等を踏まえ、自衛隊員(以下、隊員)とその家族の派遣活動段階に即したソーシャルワーク支援システムに関する試論について検討を行った。 その結果、隊員が従事する派遣活動(Deployment)の各段階(前・中・後期の3段階のモデルを使用)において生じる生活変動が、彼らの身体的・心理的・社会的側面に与える影響を考慮したソーシャルワークを展開する必要性が明らかとなった。つまり、派遣活動(Deployment)の各段階において、隊員と家族を取り巻く環境は大きく変化し、彼らが直面する生活課題も隊員と家族それぞれに異なるため、彼らのQOLの向上を図るためには、人間を取り巻く環境と相互作用する接点に介入することを主軸とするソーシャルワークが有効であると考える。 その際に必要な視点としては、隊員と家族を取り巻く環境要因である「国内・国際情勢」「組織(防衛省・自衛隊全体と各隊員が配属されている駐屯地・基地等を指す)」ならびに自衛隊員が従事する「任務」の影響とその相互作用を考慮する必要が明らかとなった。加えて、自衛隊に固有の「職業文化」が彼らの身体・ 心理・社会的側面とそこに生じる「複合的な生活課題」に影響を与えている構造を勘案したうえで、各派遣活動段階の特徴を考慮したソーシャルワーク実践を展開する必要があると考える。 さらに、その実践活動に従事する専門職については、ソーシャルワーク専門職としての専門的知識・技術に習熟しているだけではなく、隊員と家族を取り巻く固有の環境(「国内・国際情勢」「組織」・「任務」)ならびに職業文化が彼らの生活課題に与える影響を考慮し、さらにそれらを活用したエンパワメントを進めるための専門職養成プログラムの構築の必要性も認められた。
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